今年初めからコロナ不況の中で砂糖、家庭用油など生活必需品の値上げが始まったが、こうした値上げラッシュが本格化するのが、コロナ後、経済活動が上向いてからだという。マーケット・アドバイザーの天野秀夫氏が予測するのが鉄道料金だ。
「JR東日本、JR東海、JR西日本の3社は1987年の民営化以来、消費税の価格転嫁以外に値上げをしていません。コロナで利用客が激減して経営が悪化し、現在は終電の繰り上げでしのぎ、JR東日本はラッシュ時に運賃を上げて昼間に運賃を下げる“変動運賃制”を検討している」
私鉄も状況は似ている。
「JRや地下鉄を含めて、鉄道会社は収益が悪化する中でホームドア設置などを進めて設備投資がかさんでいる。通常に戻ったときに値上げせざるを得ない」(同前)
航空会社の利用者の減り方は鉄道以上だ。経済アナリストの森永卓郎氏がいう。
「需要が回復したらまず動くのは割引運賃の縮小ではないでしょうか。経営体力がある頃は、価格競争で東京~大阪間が1万円を切る料金設定もありましたが、減便でそうした割引率が大きな設定が減っている」
自動車や家電などの価格動向に大きく影響しそうなのが半導体の値上がりだ。昨年以来、巣ごもり需要でゲーム機や家電の売れ行きが好調で世界的に半導体の生産が逼迫し、多くの自動車メーカーは売れ行きが回復しているのに、半導体不足で一部の車種の減産に追い込まれている。
日本の半導体大手ルネサスエレクトロニクスは材料費の値上がりで車載向け半導体を数%、それ以外の半導体は1~2割の大幅値上げを要請し、東芝も値上げを交渉中だ。
それが部品価格上昇となって自動車、パソコンや家電など製品価格にも転嫁されることが予想される。
「とくに地方の足である軽自動車は、3年後くらいをめどにハイブリッドなど電動化が進むと見られ、コストアップで値上がりの可能性が高い」(天野氏)
年金減額、医療費・介護費の値上げで老後資金が細る一方の高齢者は、「孫にゲーム機やパソコンを買ってやりたい」と思っても、コロナ後にはそんな余裕はなくなるかもしれない。
※週刊ポスト2021年2月19日号