賃貸物件では「単身者限定」「ルームシェア不可」「子持ち世帯の入居お断り」など様々な条件があるが、なかには「同性愛者の入居お断り」との物件もあったという。こうしたケースは、法的に問題はないのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
札幌地裁が“同性婚を認めないのは違憲”との判決。私たち同性愛者にとっては心強い判断です。その昔、パートナーと部屋を借りようとしたとき、大家さんには正直に「私たちは、そういう関係です」と申し出たら「部屋は貸せない」と拒否。今後、こんな偏見の強い大家さんも、罪に問われていきますか。
【回答】
それは同性婚を認めない戸籍法が憲法違反なのに、改正しないのは違法として、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した裁判です。
判決によれば、同性愛は以前には病気の一種とされていたが、現在は治療対象とはされず、同性婚を認めたり、登録パートナーとして婚姻に準じる扱いをする国があり、国内の自治体にも登録制度の動きがある。また、同性婚を許容する意見も増えている風潮もあり、こうした背景を踏まえ、性的指向が人生の初期か出生前に決定され、自分の意思でコントロールできないのに、様々なメリットがある婚姻を同性愛者に対して認めないことは、法の下の平等を保障した憲法14条の差別を禁じる、要は性別や社会的身分による差別と同じとして、憲法違反と判断しました。
この判決に従えば、同性愛を理由とした差別的扱いは憲法に違反します。しかし、部屋の賃貸借は取引行為であり、その契約は当事者の自由で、大家は店子を選べます。他にも、憲法は公権力と個人との関係を規律するもので、直接私人間の契約に適用されません。
とはいえ、差別は憲法の理念に反します。合理的根拠がなく、社会的に許容できない差別は、不法行為になります。個人的交際や閉鎖的な団体内の差別であれば別かもしれませんが、同性愛というだけでの理由で部屋を貸すことを拒否すると、相手を侮辱したことになり、法的利益を侵害する不法行為になる可能性があると思います。