子供たちが巣立って、老夫婦ふたりには広すぎるマイホーム。ならば、老後資金を作るためにも家を手放すべきか、最期まで住み続けるべきか。
自宅を売却して、コンパクトなマンション購入を考えた時に、そもそも思うような価格で自宅が売れないことは少なくない。くわえてマンションだと管理費や修繕積立金などで月々の生活費が跳ね上がり、生活が苦しくなることも。
それなら、賃貸物件へ引っ越せばいいのだろうか。そうすれば、マンションの購入費用がかからず、家の売却代金をそのまま老後資金に充てることが可能だと感じるだろう。だが、引っ越し代とは別に礼金・敷金がかかるうえ、月々の家賃も支払うことになる。
しかも、高齢になるとスムーズに物件が借りられるとは限らない。2年前に夫に先立たれて3LDKの一戸建てでひとり暮らしになり、買い物に便利な商店街のある駅近くの賃貸マンションを探していた70代の女性・Aさん。だが、物件が思うように見つからない。気に入った物件があっても「貸してもらえない」のだ。
「息子が保証人になると言ってくれて安心していたのですが、なぜか入居を断られてばかり。不動産会社に理由を聞くと、“大家さんがひとり暮らしの高齢者に貸したがらないんです”と言われました」(Aさん)
賃貸物件を貸すかどうかの決定では、不動産会社よりも大家の意向が大きい。不動産コンサルタントの長嶋修さんが言う。
「高齢者が家を借りにくいのは、大家さんが孤独死されるのを嫌がるからです。長い間遺体が発見されずにいると、“事故物件”になり、後が大変ですから」(長嶋さん)