老後の夫婦関係を考える際に、忘れてはならないのがお金の管理だ。都内の50代会社員が失敗談を語る。
「私は家計はすべて妻に任せきりにしていた。その妻は40代で腎臓がんが見つかり、わずか1か月で急逝しました。悲嘆にくれながら死後の処理のために妻が保管していた我が家の口座を見たら、預金が15万円しかありませんでした。私が稼いだお金を妻が好き勝手に使っていたのです。確かに家にはブランド品がたくさんありましたが、妻がパートで稼いだ金で購入していると思っていた。妻を信じていただけにショックが大きかったです」
夫に内緒で株投資をしているのは大阪府の60代主婦だ。
「夫は気づいていませんが、近所の主婦で集まって投資の勉強会を開いています。すでに夫の給料を原資にエネルギー関連の株に投資し、総額1000万円以上の儲けがある。離婚してもひとりで生きていけそうなので、最近は夫の扱いが雑になっています(笑い)」
“女房に投資なんてわかるわけがない”と高を括っていたら、人生の終盤に思わぬ現実を叩きつけられるかもしれない。シニアライフアドバイザーの松本すみ子氏はこう話す。
「特に専業主婦は『自分のお金がない』ことを身につまされていて、夫に内緒で投資して、へそくりを増やしている人が多い。日本の個人投資家は主婦層が多いんです。夫がいつまでも『どうせ一人で生きていけない』と妻を見くびっていると、気づいた時には軍資金を貯めた妻が姿を消していて、本当に一人で生きるのは自分ということになりかねません。
そうならないためにも、普段から妻に『ありがとう』『今日のご飯はおいしかった』『助かったよ』などの感謝の言葉をかけることが夫婦関係の継続に有効な手段です」
人生の最後で不幸にならないためには、妻に依存せず、へり下っておいたほうがよさそうだ。
※週刊ポスト2021年5月28日号