高齢化が進むとともに、自分の親より先に亡くなる「逆縁」も増えている。その場合、配偶者と自分の親という“義理の親子”が残されることもあるが、その関係に問題が生じることは少なくない。
「妹は姑の介護なんて絶対に嫌だと考え、縁を切ってしまったようです」。そう話す50代男性の妹は、夫を亡くし、もともと同居していた70代の義父母と3人での暮らしとなったが、その生活は長く続かなかったという。
「夫が生きていた当時は、妹も義父母との同居に納得してはいるようでした。義父は元会社役員で金銭的に余裕があるので、“教育費や生活費を援助してもらえる”という考えもあったのでしょう。
ただ、もともと姑とは何かとうまくいっていなかったし、何か諍いがあると夫が姑の肩を持つと不満を漏らしていた。それで、夫が亡くなった後にちょっとした口論があったタイミングで、家を飛び出してしまったのです。“あのお義母さんの介護なんて無理”と怒って、最近増えているという『死後離婚』の手続きまでしてしまった。すでに独立していた長女の家の近くにマンションを借りる予定だと言っていました」
死後離婚とは、正式には「姻族関係終了届の提出」のことを指す。この届けを出すことで、亡くなった配偶者の家族(姻族)との親族関係を終了させられる。法務省の戸籍統計によれば、2019年に提出された姻族関係終了届は3551件となり、この10年で2倍近くに増えている。
『死後離婚』の著書がある社会福祉士の吉川美津子氏はこう言う。
「実際に姻族関係終了届を提出する人はそこまでの数ではありませんが、夫の死後、義父母や親族と関係を断ちたいと考えているから、提出を考えているという相談を受けたことがあります。義理の親の介護を夫の親戚から迫られた時に断わる理由にしたいとか、万が一、義父母の生活が困窮した時に扶養するよう求められるリスクを避けたいという思いが強いようです」