企業概要
マックス(6454)は、「MAX」のブランドで展開するステープラーの印象が強いですが、釘打機や浴室暖房・換気・乾燥機等でも国内トップの市場シェアを獲得するニッチトップ企業です。
例えば、小型ホッチキスで国内75%、自動綴じ機で世界シェア約8割など。これ以外にも複数の製品でトップを撮っています。事業は、ステープラーの他、パンチ、タイムレコーダー、ラベルプリンタ、エアドライバなどの電動工具、床暖房装置や浴室暖房などの住環境機器など、幅広く展開しています。
事業分野は大きく、釘打機、鉄筋結束機等の「インダストリアル機器」、ホッチキス、タイムレコーダ等の「オフィス機器」に大別され、売上の7割をインダストリアル機器が稼ぎ出しています。売上構成比は、オフィス機器27%、インダストリアル機器69%、車いすなど4%となっています(2021年3月期実績)。
注目ポイント
2021年3月期はコロナによる影響が響きましたが、四半期毎の推移を見ると、第1四半期の15.5%減収を底に、2Qに12.3%減→3Qに4.8%減→4Qに0.2%増と、四半期毎に改善しプラス成長に転じています。
また、利益面ではコスト削減の効果も発現してきており、今期2022年3月期は、設備投資増や、営業人員増員による人件費増などを吸収してなお利益成長が見込まれています。
利益面で言えば、鉄筋結束機の生産体制の再編による効果も上がってきていると思われます。同社は2018年にタイに鉄筋結束機消耗品「タイワイヤ」の生産工場を新設しました。タイ工場の開始によって、これまで外注していた熱処理工程を内製化に切り替えたことで、15~20%程度のコストダウンが見込まれるようになったと言います。
そしてその一方では群馬県の工場で鉄筋結束機「ツインタイア」向けのワイヤの生産能力が4倍にまで高められました。
建設現場では、熟練工が慢性的に不足しており、自動結束機への需要は高まり続けていると言います。特に使用用途が拡大した新型については需要が倍に伸びた模様。コロナ禍では新設住宅着工件数の減少により販売が低調に推移しましたが、今期からの回復が期待されます。
目先の明るさに加え、中期的にも注力している鉄筋結束機を中心とした事業成長が期待できるといえます。
一方、財務面ですが、自己資本比率は76.7%、20億円の有利子負債に対して現金に214億円保有しており実質無借金という健全な内容となっています。
同社は、「ホッチキス+針」、「釘打機+釘」のように消耗品をセットとした製品展開によって、消耗品ビジネスによる収益基盤を確立しています。日常的に使用する消耗品を取り扱うことで、売上は安定しており、健全な財務を構築、それが新たな成長投資の源泉となっています。営業キャッシュフローはプラス成長が維持されており、剰余金も蓄積されています。こうした基盤から株主還元も安定しており、1995年以降減配の履歴ない(同社資料による)こともプラスに評価されるところです。
【プロフィール】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。