長引くコロナ禍でリモートワークが広がり、一気にデジタル化が進んだ人々の働き方。オンラインで会議や打ち合わせをすることも増え、わざわざ職場や取引先に出向く必要がなくなり便利になった反面、オンラインならではのやりにくさや苦労を感じている人も多いのではないだろうか。『仕事ができる人の話し方』の著者で、“話し方のプロ”として人材育成やコンサルタントなども務める阿隅和美さんが、オンラインでの実践的な話し方、伝え方のコツを解説する。
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コロナ禍で広がったオンラインでの会議や打ち合わせ。柔軟な働き方ができる一方で、発言のタイミングや目線の置き場など、いつもとは違うコミュニケーションに違和感や戸惑いを覚える人も少なくない。特に、その相手が初対面だった場合はなおさらだ。ここでは、初対面の相手にオンライン会議でやってしまいがちな失敗例とともに、その原因と解決策を紹介する。
まず大切なのが、初対面の相手と最初に交わす挨拶だ。会話がスムーズに進まなかったオンライン会議の多くは、ここで躓いている場合が多い。あなたはお客様や取引先といざ対面した時、場を和ませようとしてついこんなことを口にしていないだろうか。
「初めまして。今日はお時間を取っていただきありがとうございます。大分、暖かくなってきましたね……」
超定番とも言える「天気ネタ」だが、相手によっては「そうですね」、「暖かいですね」程度の返事しかしようがなく、話すのが得意でない相手や、忙しくて時間が無い相手の場合、そこで会話が終わってしまう。この一言が出鼻を折る形となり、会議に入る前に気まずい沈黙が続く、といった事態に陥ることもある。
では、会話のきっかけ作りが上手い人ならなんと言うだろうか。ポイントは、「相手にとって身近なこと」について「質問を投げかける」こと。例えば、
「御社もテレワークですか? 週に何回の出社ですか?」
「そのオンラインの壁紙、御社のロゴマークが入っているんですね」
など、出来るだけ相手が答えやすい質問をすることが、会話をスムーズにするコツだ。コロナの状況は刻々と変化しており、最近は出社が増えている会社もある。コロナ禍での働き方から自然に仕事の話に入っていくことができるはずだ。
初対面の相手との会話で何よりも大切なのは、「心の距離を縮める」こと。そのためには、こちらが一方的に話すのではなく、何度も“会話のキャッチボール”を重ねることを意識すべきだ。コミュニケーションの世界では、「30秒で1往復」の会話より、「15秒で3往復」の会話の方が、早く関係が深まると言われている。相手にとって身近な「質問ボール」を投げ、それが返ってきたら、またボールにして投げ返す。これを繰り返すようにすれば、最初に違和感を覚えることは格段に減るのではないだろうか。