60代以降の夫婦にとって、収入の柱となるのが年金。もちろん、夫か妻のどちらかが先に亡くなって「ひとり」になった後も、長い人生が待っているかもしれない。だからこそ「夫・妻が亡くなった後の年金の手続き」についても知っておきたい。
自営業などの場合は、夫婦とも国民年金のみの加入が多い。そうなると、受給開始後にどちらかが亡くなっても遺族が受け取れる年金はない。
他方、夫が65歳の受給開始前に亡くなった場合は、残された妻が保障を受けられる可能性がある。社会保険労務士の黒田英雄氏が解説する。
「夫の死亡時に18歳未満の子供、または障害のある20歳未満の子供がいる場合、基本額が年間約78万円の遺族基礎年金が受け取れます。ただし高齢夫婦がこの条件に当てはまることはほぼありません」
高齢の妻が残されたケースで、可能性があるのは、死亡一時金ないし寡婦年金だ。これらは二者択一となる。
「死亡一時金は、夫の国民年金加入月数が36か月以上であれば一度だけ受け取ることができます。その金額は12万~32万円。一方の寡婦年金は妻が60~64歳の間に、夫が受給するはずだった基礎年金の4分の3相当を受け取れます。こちらは夫の国民年金加入期間が10年以上で、夫婦の婚姻期間が10年以上という要件があります」(黒田氏)
この要件だけだと判断が難しく思えるが、たとえば国民年金の満額の年約78万円を受け取る資格を持つ夫が亡くなった場合、寡婦年金を選べば、妻が60~64歳の5年間、年約58万円を受給できる。つまり、12万~32万円の死亡一時金よりも、寡婦年金のほうが多くなる。
「ただし、早くに夫が亡くなった場合、受給できたはずの国民年金の額自体が少なく、その4分の3だとかなり少額しか受け取れない場合もあります。どちらかを選択するかはっきりわからない場合は、専門家に相談しましょう」(黒田氏)