住まい・不動産

コロナ経済の苦境続く ローン苦や給付金の停止で住宅を失う人続出の恐れも

コロナ禍の失業者や生活困窮者を支援する相談会も開かれている(写真は2020年12月/共同通信社)

コロナ禍の失業者や生活困窮者を支援する相談会も開かれている(写真は2020年12月/共同通信社)

 日本もついに新型コロナウイルス収束の兆しが見えたかのようだが、この間見過ごされてきた問題がある。1年半にわたる「コロナ経済」によって苦境に立たされている人たちだ。コロナ患者と違い、彼らの苦しみが伝えられることは多くなく、救済の手も伸びてはこない。

「コロナ経済」の苦境に立たされる人が増えると、最悪の決断を選ぶ人が増えるという懸念がある。事業再生コンサルタントの吉田猫次郎氏が語る。

「コロナに見舞われた経営者の相談をよく受けますが、業績悪化で従業員の給料が払えない、借金の返済ができないという状況に苦しみ、なかには自殺を口にする人がいます。昨年の夏には、自殺した社長の遺族の方から相談がありました。最近は自殺未遂した経営者ご本人からも相談を受けました。給付金や支援金、融資が打ち切られたら……最悪の状況を想像してしまいます」

 警察庁の調べでは、2019年に2万169人だった国内の自殺者はコロナ禍の2020年に2万1081人と微増。今年は8月までに1万4325人の自殺者が出ており昨年同月までと比べてすでに1000人近く増えている。

 藤井聡・京都大学教授を中心とする京都大学レジリエンス実践ユニットが昨年4月に発表した〈新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況による「自殺者数」増加推計シミュレーション〉がある。そこでは「失業率が1%上昇すると、年間自殺者が約2400人増える」との分析を用いて自殺者数を推計し、政府の経済対策がなく収束まで2年かかることを想定した「悲観シナリオ」では、年間自殺者が1年後に1万9870人以上増え、3万9870人になると予測した。

 藤井教授によると、その後約30兆円の政府の経済対策が行なわれたことなどを踏まえて再推計すると自殺者数の増加は年間1400人まで抑制できるという。ただし、経済対策が今後十分行なわれなければ、当初の予測水準に近づき3万人にも上ると指摘している。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏は「さらに生活困難者が増える恐れがある」と警鐘を鳴らす。

「今年4月、コロナ関連の解雇や雇い止めが10万人を超えたと厚労省が発表しましたが、氷山の一角です。とりわけ深刻なのが住宅ローンを抱える人で、金融機関による救済措置を受けた件数は昨年3月からの1年間で約5万件に達しました。

 また失業者などの家賃を補助する『住宅確保給付金』は2020年度中に申請した人のみ最大12か月まで延長できますが、今年になって新たに申請しても最大9か月までしか延長できません。今後はローンが払えなくなることと給付金の停止により、生活の要となる住宅を失う人が続出するかもしれず、生活者を支えるセーフティネットがなくなることが心配です」

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