時間も気合いも労力もバカにならない転職活動。その動機は、給与・待遇の改善や、やりがい、人間関係のリセットなど人それぞれだろうが、いずれにしても現状より良くなることを期待して、新天地を求めるもの。しかし、そうした基準をクリアして選んだ会社のはずなのに、いざ入社してみると想定外のことが起きることもある。転職に失敗した人たちの実例から、どんな問題が潜んでいるのか探ってみよう。
入社したら突然、上司が代わってしまい…
「転職は運みたいな部分もある。どんなに気に入った会社でも、入社してみないとわからないことや、状況が変わることだってありますから」(Aさん)
そうため息をつくのは現在、人材紹介会社で働く30代女性会社員・Aさんだ。20代半ばの頃に第2新卒として心機一転、転職活動にチャレンジした。規模はベンチャーながら大手企業の子会社とあって安定感がある企業に内定を決めた。
「新卒で入った企業は典型的な中小企業。おじさんばかりで女性の社員も少なくて、当然ながら結婚後や出産後に長く働ける気がしませんでした。その点、転職を決めた企業は、女性のことを考えた福利厚生も充実、残業も少ない環境も相まって、ホワイト企業だと感じました。面接で出会った、直属の上司になるであろう女性社員も優しかったので安心し、『ここしかない』と、複数社の内定を蹴って入社を決めました」(Aさん)
晴れて入社して配属された部署は、女性上司を筆頭に優しい人が多かったという。当初は上司から直接指導を受けていたが、想定外のことが起こった。
「実は上司は妊娠していて、体調不良が続いて休職になったんです。代わりに来たのが、サバサバした性格の私の苦手なタイプの女性でした。『わからないことがあればいつでも聞いてね』とか、『何か自分で判断して失敗してしまうくらいなら、その前にどんな小さなことでも確認して』と言ってくれていたので、その通りにすると、『そんなことも自分で判断できないの?』とか、『ちょっとは考えたら?』などと怒られることも多くて……。
服装についても『地味すぎない?』と難癖をつけられることもありましたね。出張のお土産も私にだけ配らないという、子供のいじめみたいな露骨さも面倒でした」(Aさん)
右も左もわからない新人ながら夜遅くまで企画を練り、企業対応にも追われた。Aさんなりに努力はしたが限界だったという。次第に会社に行くことが怖くなり、退職することを決めたそうだ。
「結局、入社してから4か月で辞めてしまいました。後から先輩に聞いた話によると、新しい女性上司は、入社時にその職種のポジションを狙っていたものの、叶わなかったそうです。それで、念願のポジションに就いて、私が初めての部下になったわけですが、イビリっぽいことをする態度で上司風を吹かせていたようです。
結局、彼女は前の上司が職場復帰した後もそのポジションに居座っています。すごく悔しかったですけど、今は“事故”だと思っています。どんなに良いと思った会社でも、上司は変わる可能性があるし、上司が変われば居心地も変わるという当たり前のことに気づきました」(Aさん)