コロナ禍2年目となり、多くの人が自粛生活に慣れてきた2021年。やや停滞気味だったというファッションの分野では、どんなブームがあったのだろうか。
各社はやはり「おうち時間」に着目したと、ファッションジャーナリストの南充浩さんが指摘する。
「外出自粛の影響で、2021年は“誰もが着ている”といったわかりやすいファッショントレンドは生まれませんでした。
そこで各社が出したのが、ホームウエアと外出着の中間にあたる洋服です。代表的なものがAOKIの『パジャマスーツ』。見た目はフォーマルなジャケットとスラックスですが、実は非常に伸縮性に富んだ素材で動きやすく、寝間着にもできる。洗濯機で丸洗いができるので、クリーニングに出す必要もありません。“24時間どんなシーンでも着られる”と売り出し、販売着数は累計5万着といわれています」
また、緊急事態宣言真っ只中の3月には、東京ソラマチに『#ワークマン女子』東京1号店が開店した。もともとリーズナブルで高機能な作業着を販売していたワークマンが、女性向けアウトドアウエアの販売に乗り出したのだ。
「家の外に出たくても、オフィス街や繁華街には行けない。外に出て、人が少ない場所に遊びに行くとなると、アウトドアに意識が向く。本格的なアウトドアには手を出しづらいという女性に注目を浴びたのです。また、遠出はしなくとも、ふだんの買い物など“ちょっとそこまで”のためのワンマイルウエアとしての需要も高い」(南さん)
大人たちのファッショントレンドが停滞している一方、若者たちのトレンドは「1990年代」。ミニスカートに厚底ブーツ、ルーズソックスといったなつかしのアムラーファッションやコギャルスタイルが「エモい」と、リバイバルしているのだ。
南さんは、ヒールをはかない女性が増えたことで「ハイヒールよりは足が疲れにくい新たなおしゃれ」として、再び厚底が注目されているのではないかとみる。一方、消費者経済総研チーフ・コンサルタントの松田優幸さんは、令和の親子関係に注目する。
「2021年は、家族の絆が見直された年でもあります。昭和や平成初期のように親と子が対立せず、友達のように仲がいい。母親が10代の頃にしていたファッションを娘が好んでまねするようになっているのです」