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野生鳥獣の捕獲地に出向く移動式解体処理車「ジビエカー」の可能性

高知県梼原町を走る「ジビエカー」(写真提供/梼原町)

高知県梼原町を走る「ジビエカー」(写真提供/梼原町)

 クセの強さや生臭さで敬遠されたジビエ(野生鳥獣肉)が、濃厚かつ滋味深い健康食材として美食家たちの舌を唸らせるようになって久しい。かつてはひと握りのグルメたちにしか届かなかった垂涎の味覚は、今では狩猟ビジネスの進化によって多くの人々の元へと届くようになっている。その進化のひとつが移動式解体処理車「ジビエカー」の登場だ。

 全国で初めて「ジビエカー」を導入したのは、町面積の91%を森林が占め、「ジビエの町づくり」に取り組んでいる高知県梼原(ゆすはら)町だ。捕獲地にジビエカーが出向き、すぐに洗浄や殺菌、解体処理が可能なため、新鮮な状態の高品質な肉を確保できる。

 野生鳥獣を食肉にする場合、捕獲後に鳥獣を絶命させる「止めさし」から2時間以内に処理施設に運んで解体処理することが求められる。処理施設から遠く離れた山奥などで狩猟・捕獲すると、時間内での運搬が困難だったり、特に高齢者には体力的な負担も大きく、廃棄するケースが多いことが全国的な課題になっている。

解体室や清水タンク、高圧洗浄装置などを完備するジビエカーには、最大5頭分の枝肉を冷蔵・冷凍保管できる(写真提供/梼原町)

解体室や清水タンク、高圧洗浄装置などを完備するジビエカーには、最大5頭分の枝肉を冷蔵・冷凍保管できる(写真提供/梼原町)

 そこで、長野トヨタ自動車と日本ジビエ振興協会がジビエカーを共同開発。梼原町が2017年に購入し、住民らで構成する処理施設運営者のNPO法人に貸与する形で稼働している。

「南北に長い梼原町の全域で捕獲したイノシシやシカをジビエに有効利用できる態勢をつくり、販路も全国に広がっています」(竹内正太郎梼原町まちづくり推進課長)

 ジビエカーの基地である梼原町獣肉解体処理施設「ゆすはらジビエの里」から遠い地区にジビエカーが移動して剥皮・解体など1次処理を行ない、冷蔵状態で施設に運搬する。解体室や清水タンク、高圧洗浄装置などを完備するジビエカーには、最大5頭分の枝肉を冷蔵・冷凍保存できる。

 町内を走るジビエカーの車体にはシカやイノシシ、ジビエ料理のイラストが描かれ、ジビエのPRや普及にも効果が出ているようだ。

取材・文/上田千春

※週刊ポスト2022年1月28日号

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