今、全国各地で取得を望まれているというのが「狩猟免許」だ。野生動物による農作物被害などを減らすため、後継ハンターの育成が急務となっているのだ。では、実際に狩猟免許を取得した女性に話を聞いた。
「ハンターになったきっかけの1つは、イノシシ肉を食べて体調がよくなったからです。ジビエは高価なので“じゃあ自分で捕ろう”と」。そう言って笑うのは、和歌山県加太町在住の溝部名緒子さん。
エステサロン経営の傍ら、2018年に猟友会の女性部を創設。「狩りガールフェスタ」というイベントを開催し、ジビエ料理の講習や狩猟の魅力を伝える活動を行う。
「現在女性会員は89名います」(溝部さん・以下同)
狩猟免許は、銃猟免許(第一種・第二種)、わな猟免許、網猟免許の3種あり(このほか銃猟免許の場合は警察で銃刀法の試験がある)、各都道府県で猟具や鳥獣、法令の知識試験と猟具取り扱いの技能試験が行われる。
「試験前の1年半は情報収集や準備に費やしました。銃砲店に出入りし、店主や猟師さんに鉄砲のことや動物の解体方法までいろいろと教えてもらい、2013年に第一種とわな、網の免許を取りました」
ジビエが食べたくて始めた狩猟の世界は、予想外に広がっていった。
「いまは動物と人間が住む地域の境界線が曖昧になっていますが、狩猟者が山に入ることで野生動物が警戒し、里に下りてくるリスクを回避できます。害獣駆除の面でも、イノシシやシカは有名ですが、一見かわいらしいアライグマも、実は空き家にすみ着いて畑を荒らす問題児。貴重な鮎を大量に食べてしまうカワウ(鳥)もやっかいです。こうした生態系の営みも、狩猟を通して学んだことです。また、SDGsの観点から、捕った動物の活用法として、アライグマの毛を使った化粧筆の開発を進めています」