国内最大の飲料メーカー・サントリーホールディングス。同社の“次期社長”と確実視される創業家の最高幹部が社内で“アクション”を起こした──。
2月17日、全社員宛に送られたメールには力強いメッセージが書かれていた。
〈今こそサントリアンの力を全て結集して、このビール戦争を勝ち抜かなくてはなりません〉
〈私も「狂」となり、先頭に立って、「へこたれず、あきらめず、しつこく」戦いぬきます。皆さんも必死でついてきてください〉
題名は〈【サントリアンへのメッセージ】「ビール事業 真の自立」に向けて〉。送り主はサントリーホールディングスの鳥井信宏副社長(55)だ。鳥井氏はサントリー創業者の鳥井信治郎氏のひ孫にあたる。
メールの主旨は2023年、2026年に酒税改正を控えるサントリーのビール事業は「勝負の年」を迎えており、その苦境を乗り越えるためにはデジタルもフル活用してプロモーションしていく必要がある──といった内容だ。
単なる経営幹部からの叱咤激励にも見えるが、社内では様々な受け止め方をされているようだ。同社の男性社員が言う。
「新浪剛史社長(63)から社員を鼓舞するようなメッセージが届くことはありますが、鳥井さんからというのは珍しい。しかも『俺についてこい』という熱い内容だったので、社内では『社長が交代するのかな?』とも囁かれています」
一族経営のサントリーでは、2014年にローソンの経営を立て直した“プロ経営者”の新浪氏を、創業家以外から初めて社長に抜擢した。
しかし新浪氏はインタビューで「次の社長は(創業家の)鳥井信宏副社長」と明言しており、国際経験豊かな新浪氏は鳥井氏の“教育係”と見られている。2020年には「2021年3月の株主総会で交代するのではないか」との報道もあったが、現在も新浪氏が社長の椅子に座り続けている。新浪氏は今年で就任以来8年目で、日本企業における社長の一般的な任期とされる「6年」を上回っている。