いまテレビ業界を取り巻く状況が激変している。NHK放送文化研究所が2020年に実施した「国民生活時間調査」によると、16~19歳では一日にテレビを視聴する人が5割を下回り、20代以下は一日にテレビを視聴する時間よりもネットを利用する時間のほうが多かった。いまや若い世代はリアルタイムでテレビを視聴する習慣がなく、代わりにYouTubeやNetflixなどの動画配信サービスを利用している。こうした環境変化に伴い、放送業界全体がビジネスモデルの転換を迫られている。
ネットが主となる時代が到来するなか、昨年はそれを象徴する出来事が起こった。昨年10月にTBSが制作した日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』だ。
このドラマはテレビだけでなくNetflixでも配信され、配信料は1話あたり1億円とも報じられた。
「私は以前、Netflixの人に『ウチ、お金だけはありますから』と言われたことがあります。今後、民放はNetflixなどが持つ巨額の予算を頼ってコンテンツを制作し、ネットで配信するケースが増えるでしょう。
冗談のような話ですが、Netflixのなかに日テレやフジテレビのチャンネルが組み込まれる日が来るかもしれません」(メディア文化評論家の碓井広義氏)
こうした時代にテレビ局が生き残るために必要なのは、「1にも2にもコンテンツ力の強化」と碓井氏は指摘する。
「今やテレビ局が作った映像とYouTubeに投稿された素人の映像が、すべて等価で横並びになっている時代で、視聴者は面白いコンテンツを自分の見たい時間に視聴しています。テレビ局は時間枠という概念を取り払い、より視聴者を惹きつける“独自のコンテンツ”をそれぞれ作っていくべきです」
昨年は、日本テレビが音楽番組内でスマホをかざすと、出演者が自宅に出現したりするAR(拡張現実)サービスで話題を呼ぶなど、各テレビ局でコンテンツ力の強化のための試行錯誤が続いている。