年々、過熱する中学受験。首都圏模試センターによれば、2022年度の1都3県の中学受験者総数は、推定5万1100人に達し過去最多。受験率も17.3%と過去最高となったという。だが、そうはいっても公立中学校に通う人がまだまだ多数派なのは間違いない。公立中学にはさまざまな家庭環境の子供たちが集うため、学校生活も“多様性”に富んでいると言われる。公立中学に通った経験は、その後の人生にどう活きてくるのか。出身者たちのリアルな思いを聞いた。
「社会の縮図」「多様性」
都内の公立小・中・高から有名私立大学に進学した30代女性・Aさん(メーカー勤務)は、「たしかに公立中での生活に“向き・不向き”はあるかもしれません」と指摘する。
「公立中にはそれぞれの家庭環境で、いろいろな子たちがいるため『社会の縮図』『多様性』などと称されますが、実際その通りだと思います。私の通っていた中学には、警察沙汰になる子、障害を持つ子、給食費が払えない子など、本当にさまざまな子がいました。世の中にはいろいろな人がいる、という当たり前の感覚は、やはり公立中時代に大きく培われたと思います。
ただ、地域や学校差はあるでしょうが、私の学校の場合、勉強は基本的に『できない子』に合わせる感じだったので、勉強意欲がある子にとって、授業は退屈でした。また、高校進学には内申点が重要視されるので、部活や委員会、ボランティアなどに積極的に取り組み、教師に好かれるような自分を演じる顔色をうかがう3年間になりかねない。私立のように落ち着いた環境ではなく、勉強で切磋琢磨する人もいなかったので、そうした環境に流されずに自分を貫けるかどうかが大切です。合わない子はとことん合わないかもしれません」(Aさん)
落ち着いて勉強に専念できない環境は自分が合わないと感じたAさんは、そこから抜け出したいと思い立ち、勉強に勤しんだ末に、都立高校に入学した。そこは進学校として知られる高校だった。
「中学時代は、勉強していると“つまんないヤツ”といった目で見られたものですが、高校はさすが進学校なので、みんな授業はしっかりと聞くし、真面目に頑張る人をからかったり馬鹿にしたりしない。目標に向かって頑張れる仲間に初めて出会えたことに居心地がよさを感じました。私にとっては天国でした」(Aさん)
そんなAさんには、現在小学4年生の娘がいるが、中学受験をさせるかどうか迷っているという。中学から大学まで私立だった夫は“中学受験派”だが、Aさんは慎重な姿勢だ。