中国の景況感が急速に悪化している。国家統計局、中国物流購買連合会が3月31日に発表した3月の製造業PMIは49.5で、前月と比べ0.7ポイント悪化、市場予想よりも0.4ポイント低い結果となった。この指標は50を超えれば前月と比べて景気が拡大、下回れば縮小していることを示唆しており、今後の中国経済の先行きが懸念される。
なぜ悪化したかについて、中国物流購買連合会は、「ロシアによるウクライナ侵攻」と、「国内で再流行し始めた新型コロナウイルス」の2点を指摘している。これらによって、エネルギー、原材料などの調達コストが上がり、供給側に支障が出た。また、需要が収縮し、企業家の将来に対する見通しが悪化したなどと説明している。
ロシアのウクライナ侵攻による影響についてはまだまだ予断を許さないが、中国固有の問題として注目されているのが、新型コロナウイルス感染再拡大の影響だ。当局の実施するゼロコロナ対策はあまりにも厳しく、景気への影響は甚大だと見られているからである。
国家衛生健康委員会が発表した4月4日の新型コロナウイルス新規感染者数(海外からの流入者を除く)は1173人。この内、吉林省長春市が604人と過半を占める。
長春市政府は3月11日、次の3点の緊急対策を実施すると発表した。
【1】学校を閉鎖、生活物資を販売する小売店、医療機関などを除き、企業や、タクシー、地下鉄、バスなどの交通機関の営業を停止する
【2】不必要な外出を禁止する
【3】全市民に対してPCR検査を実施する
4月5日現在、依然として都市封鎖状態が続いており、一部ではそれがさらに強化されている。
現地に住む知人たちによれば、長春市寛城区では4月3日から外出禁止が強化され、自宅のドアから外に出ることさえ禁止された。知人は先日まではマンション区内の小売店で食料を買うことができたが、その小売店さえ閉鎖となった。食料は営業を許可された一部の地方スーパーにオンラインで注文し、自宅で受け取るしか方法がなくなったが、その後の通達で、それすら難しくなった。すべてのオンライン注文が4月7日まで(5日間)、停止されることになったからだ。
2日に1回のペースでPCR検査が行われているが、4月3日以前は1階まで下りて行き、そこで行われてきたが、3日以降は係員が自宅の前までやってきてそこで検査が行なわれている。
寛城区政府は3日付で、外出した者は公安機関による訓戒、200元(3800円、1元=19円で計算)の罰金もしくは行政拘留、状況次第では法律に基づいて刑事責任が追及されると通告した。生活物資を供給する店舗を除く、すべての店舗が閉鎖を命じられており、違反者は市場管理部門から罰金を科された上に、営業許可証を取り消される。
市民はまるで戦時下のような窮乏生活を余儀なくされている。
そうした中で、地元の大手スーパー(欧亜集団)が各地域から届いた民間からの無償支援物資を高額で売りさばいていた件が発覚、同社は3月30日、すべての支援物資を地方政府に供出すると発表している。長春市の経済は大混乱に陥っている。
長春市内でも寛城区政府の幹部は免職となり、寛城区の行政責任者は四平市委員会の書記が兼ねることになった。この責任者も4月7日までに事態を改善させられなければ、即刻左遷されるだろう。そのため、行政命令の激しさが増している。