「お待たせしすぎたかもしれません」「ナイスですね!」。往年のセリフが、ドラマ『全裸監督』(Netflix)のヒットで蘇った。モデルとなったAV監督の村西とおるさん(73才)も忙しそうだ。
「おかげさまで大変な人気者になりまして、そのうち村西とおるの二万円札ができるんじゃないかとの噂もあるとかないとか(笑い)」(村西さん・以下同)
裏本制作販売の成功→逮捕・倒産、AV制作の成功→逮捕・倒産と村西さんの人生は、文字通りジェットコースターだ。何度も立ち上がるバイタリティーはどこから来るのか。
「失敗をリスクとするか、糧とするかで捉え方が違うんじゃないですか? 『禍福はあざなえる縄のごとし』というように、いいときもあれば悪いときもあるでしょう。何が吉で凶となるか、結果はその瞬間ではなく、数年、数十年経ってみないとわからない。だから、どんな失敗もありがたいと思ってきたんです」
その例が1986年に15名のスタッフとともにハワイの別荘で撮影中に逮捕されたことだ。
「66の罪で起訴され、懲役370年を求刑されました。4回死んでも日本に帰れない年数です。必死で裁判をして、司法取引で日本に帰ることができましたが、死んでしまいたいとも思いました。でも、35年後、『こんな愚か者がいたのか!』と、Netflixの目に留まることになりました」
1992年には、50億円の負債を抱えて倒産してしまう。
「ここまでくるとほとんどの人は終わりですよ。私も逃亡したかったくらい。でも、逃げなかったのは、私が真面目だとか誠意のある人間とかじゃないんです。たまさか保証人になってくれた人の家庭までめちゃくちゃにしてしまう恐れがあったから逃げなかっただけ。死に物狂いで働いて20年あまりで返済しましたら、世間の評価が『逆境に強い男』に変わり、いろいろなお仕事から声をかけてもらえた。どんなに最悪の事柄も、“いつか財産になる”と言える思考性が、自分の運を決めるんですね」