第三者が本人に代わって預貯金などの財産管理や日常生活の支援を行う「成年後見制度」。親や配偶者が高齢化し、判断能力を失った時のために利用する人が増えているという。しかし、家族が後見人に不満を抱くというケースもあるだろう。一度選任された後見人を後から解任することはできるのだろうか──。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
うちの両親は成年後見人に預金通帳を預けています。その人は、最初は調子のいいことを言っていましたが、本当にお金が必要なときでも食費以外の費用を渡してくれません。私が代理で話し合いをしようと電話をしても「ダメ」の一点張り。さらに、私たち子供にも連絡を寄こさず、勝手にいろいろと決めてしまうのも納得できません。そのような対応を見ていると、両親が亡くなっても預金通帳を返してもらえないのではと心配です。どうしたらよいでしょうか。(熊本県・48才・パート)
【回答】
成年後見人がついているというのですから、家庭裁判所の手続きで法定後見が開始していることになります。成年後見人は、被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮する義務があります。成年被後見人になったご両親の子供としては、この点で不満があるということですね。
成年後見人の後見事務の処理方法に不満がある場合、家族が手続き的にできることとしては、「後見人の解任を求める方法」「後見監督人の選任を求める方法」「後見事務の監督を求める方法」「追加の成年後見人の選任を求める方法」があります。いずれも被後見人の親族であれば、申し立ては可能です。申し立て先は家庭裁判所で、それぞれ申し立てを認める要件の有無を審理して判断します。