スマホを操作しながら自動車を運転することは処罰の対象となるが、簡単な飲食のために片手で運転するのはどうだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
GWは近場の温泉に車で行きました。想像以上の渋滞につかまりましたが、気になったのは、多くのドライバーが片手でハンドルを操作し、もう一方の手でサンドイッチなどを食べていたこと。サービスエリアも満杯でしたし、仕方なかったとはいえ、このような片手運転は、道交法等に引っ掛かりますよね。
【回答】
『道路交通法』71条で、運転者の遵守事項の一つとして運転中に、手で保持しなければ、送信及び受信ができない携帯電話などの無線通話装置を通話のために使用しないことが挙げられています。
スマホを手で持って通話すると、片手運転になり、この遵守事項の違反は6か月以下の懲役、又は10万円以下の罰金です。“スマホのながら運転”で交通の危険を生じさせたら、1年以下の懲役か、30万円以下の罰金に処せられます。
他に片手運転を禁じた規定はありませんが、『道交法』70条は運転者の安全運転義務を定め、違反すると、反則金は普通乗用車で9千円、減点2点になります。もし、刑事事件になれば、3か月以下の懲役、又は5万円以下の罰金に処せられます。ご質問の場合、食事での片手運転が、この安全運転義務に違反するかが問題となります。
ともあれ、運転中にはどうしても片手にならざるを得ないときがあるのに、安全運転義務とは「道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転」することであると、かなり曖昧です。人を処罰する以上、厳格に解釈されるべきで、だからこそ、スマホのながら運転などを類型的に危険運転とし、具体的に特定して処罰することにしているわけです。