いまや“生涯現役”が当たり前となった。第2の人生でどんな仕事を選ぶかは、生きがいとしてはもちろん、定年後の生活費を大きく左右する。そうした中で注目されているのがタクシー業界だ。「運転が好き」という人なら、一度はタクシードライバーを定年後の仕事にすることを考えたことはあるかもしれない。
タクシー業界は景気の影響を受けやすく、かつてはリストラされた会社員が頼る“最後の職場”というイメージを持たれたこともあった。だが、その収入は思いのほか高く、会社員からドライバーに転じて、サラリーマン時代の年収を超えることさえあり得るという。
タクシー業界に詳しいライターの栗田シメイ氏が解説する(以下、カギカッコ内は栗田氏)。
「法人タクシーに限っても、東京都心で営業する大手タクシー会社の営業所には年収1000万円超のドライバーが数人ずつ、800万円超も珍しくない」
タクシー運転手の平均年齢は60歳(一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の統計調査)であり、“生涯現役”が当たり前になる時代において、多くの中高年にとって働き口の選択肢となり得る。
都内のドライバーの平均年収は450万円程度とされるが、その2倍を稼ぎ出す“エースドライバー”は何が違うのか。
「法人タクシー運転手の給与は完全歩合制のところがほとんど。会社によってパーセンテージは異なりますが、売り上げの55~65%くらいがドライバーの取り分となる。売り上げが1700万円ほどで年収1000万円に届くイメージです」
タクシードライバーといえば一昼夜稼働して一日休む「隔日勤務」の体制が思い浮かぶが、それでは稼げないようだ。
「1000万円プレイヤーは50代、60代でも終電後、深夜割増がつく夜専門で稼働している精力的なドライバーです。夜7時から翌朝4時といった深夜帯に街に出て、1日7万円程度の売り上げをコンスタントに上げる。新規客を乗せるたびに車中で名刺を渡して営業をかけるなど、押しの強いタイプが多い印象ですね」