相続トラブルはお金持ちだけの話──そう安易に思っていたら大間違い。親が残すのは「プラスの財産」ばかりでなく、借金などの「マイナスの財産」も含まれる場合があるのだ。実際の相続の際に特にトラブルになりやすいのは不動産だ。
埼玉県在住の青木史子さん(49才・仮名)は3年前に他界した母から、静岡県の海沿いにある実家近くの土地を相続した。
土地を実際に見たことはなく、地元の不動産業者に電話で聞いたところ「立地がいいから買い手は見つかるだろう」と言われたので、いつか見に行こうと思いながらもつい放置していた。
そんなある日、市役所から一通の通知が届いた。そこには、相続した土地に大量の廃棄物が不法投棄されて、近隣住民からの苦情が殺到していると記されていた。
慌てて業者に連絡すると「撤去には1000万円かかる」と言われてしまった。そんな大金はとても払えない青木さんは、急いで地元の不動産業者に土地を引き取ってもらえないかと打診したが……。
「“不法投棄で一部の土壌が汚染されて、浄化費用は500万円です”と言われました。こんなことになるなら、相続放棄しておけばよかった」(青木さん)
『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)の著者で司法書士の椎葉基史さんが指摘する。
「相続人には、相続した不動産を管理する義務が生じます。“土地は持っておいて損はない。不要になったら売ればいい”と考える人が多いですが、どのような土地なのか確認することもなく、安易に相続するのは避けるべきです」