高級分譲マンションにタワーマンション……。一般的に収入が高い人ほど、住居にもお金をかけるイメージが強いだろう。とはいえなかには、高年収でもあっても住居にお金をかけないスタンスの人もいる。国税庁の「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者5245万人の平均年収は433万円。この額を大幅に超える高年収で、「家賃にお金をかけない」人たちに、その価値観を聞いてみた。
IT企業に勤務する男性・Aさん(30代独身)は、同業界で数回の転職を経て、現在年収1000万円オーバー。年収300万円ほどだった新卒の頃から変わらず、都内の家賃5万円台の物件に住み続けている。
「築年50年くらいの1DK。風呂とトイレは一緒、洗濯機はベランダです。宅配ボックスもないし、オートロックもありません。日当たりが良いのが唯一の自慢です。でも、寝るには十分。生活するうえで全然困っていないので、何の問題もありません。駅までは少し遠いですけど、スーパーは近いので住みやすいです」(Aさん)
そんなAさんのマンションに同僚や友人が訪れた際には、決まり文句のように「稼いでるのに」「もっといいとこ住みなよ」などと言われるが、Aさんはそれが不満のようだ。
「年収は平均以上の部類に入るかもしれませんが、だからといって、5万円で買えるものは新入社員の頃と同じです。高収入の人は高給時計や車を持っていないとダメなのでしょうか。僕は服や時計にも興味はないし、車の免許も持っていない。旅行も面倒だから行かない。お金をかけることといえば、仕事の勉強に買う専門書くらいですね」(Aさん)
こんなAさんの考え方には、学生時代に言われた父親の言葉「一度、生活水準を上げたら、戻れなくなるぞ」という言葉も影響しているようだ。
「父の言葉が、今になってわかるような気がしています。大手企業に入社して、20代後半くらいから、住まいや交友関係が突然派手になった友人がいるのですが、最近久しぶりに飲んだら、ものすごいケチになっていました(笑)。ボーナスが減ったとか、ローンが払えなくなりそうとか、文句ばっかり。
その一方で、生活水準を落としたと思われたくないようで、飲み会では人より多く払おうとする。なんだか生き辛そうで、一度いい目を見ると戻れないとはそういうことなんだな、と実感しました」(Aさん)