なかなか収束しないコロナ禍に加え、日中の酷暑や寝苦しい熱帯夜が続き、疲労を感じている人も多いだろう。その原因は、脳にあるかもしれない──。
「脳は体の司令塔。疲れを感じるのも、主に脳の働きによるものです」と言うのは、脳神経外科医の奥村歩さん。
「脳の働きをよくすることは健康維持に不可欠ですが、実は、脳は暑さに弱い。脳は体温より0.5~1℃高いといわれていて、直射日光を浴びたり、暑い室内にいると、脳の温度が上がってしまうのです」(奥村さん・以下同)
熱中症の初期症状で頭がぼーっとするのは、脳が「疲れた」と危険信号を発しているからだ。
「脳は体温や脈拍、血圧などを調節していますが、熱中症が重症になると誤作動を起こし、体温の制御が効かなくなってしまうんです。
従って、脳の疲れを取るには、脳の温度を上げすぎないこと。熱帯夜(気象庁の定義では最低気温が25℃以上)のときは、冷房を25℃くらいに設定し、体は薄手の羽毛布団などにくるまって顔と頭だけ冷やすことをおすすめします(朝まで)。
『冷房は体が冷えてだるくなる』という人がいますが、タオルケット1枚程度では確かに体は冷えてしまいます。ですが、28℃程度の冷房設定では脳の疲れが取れず、睡眠不足にもなるので、酷暑時に限ってはこの方法で脳の元気を保ってほしいですね。
熱中症気味かなと感じたら、そけい部(脚の付け根)、頸動脈、脇の下など、脳に行く太い血管を冷やしましょう。よく、若い女性が携帯できる小さい扇風機を首元にかけているのを見かけますが、あれはとても理にかなっています」
【プロフィール】
奥村歩さん/脳神経外科医。おくむらメモリークリニック院長。「もの忘れ外来」にて延べ10万人以上の患者を診断。『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)ほか著書多数。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2022年8月11日号