相続トラブルを避けるためにカギを握るのは「遺言書」だ。公証役場で作成する「公正証書遺言」のほか、自分で手書きする「自筆証書遺言」もある。形式的に不備のない遺言書をつくるには公正証書遺言のほうが安心だが、相続トラブルの可能性を減らすにはどうすればよいか。
遺言書には、遺産分割割合などを具体的に指示する本文のほか、法的効力はないが自由に書ける「付言事項」がある。
相続実務士で夢相続代表の曽根惠子さんは、付言事項を書くことが、余計な争いを防ぐことにつながると語る。
「“長女は介護をしてくれたから多めに渡したい”など、本文に書いてある遺産分割割合の意図を書くのがいいでしょう。ただし、きょうだいが多い場合に“お兄ちゃんは小さい頃からかわいくて”などと、誰か1人についてだけ書くと、もめ事の種になる。付言事項に書くなら、相続人全員の名前とメッセージを書きましょう。一方で、生前の恨みつらみや非難めいたことを書いてしまっても、もめ事につながる恐れがあり、配慮が必要です」(曽根さん)
公正証書遺言の場合、4枚を超えてから、1枚あたり250円の費用がかかる。大きな金額ではないが、だからといって、長々と書くべきでもない。ベリーベスト法律事務所の弁護士・田渕朋子さんが言う。
「多くの人が、付言事項は2、3行で済ませています。分割の意図や家族への感謝の言葉を記載することが多いほか、遺言書に“生まれつき障害がある次女が生計を立てられるように、賃貸収入の得られるマンションを買ってあげた”など、理由があって相続財産とは別に、生前に財産を譲っている場合は、その旨を書くことで持ち戻し免除の意思を明確にすることもあります」