“日の丸家電”の一角だった東芝が国内企業十数社の共同出資によって買収され、ついに非上場化に向かう見通しだ。これから本格的な再編へと舵を切るが、社員12万人には“茨の道”が待っている──。『東芝解体』の著者・大西康之氏がその深層に迫る。
東芝再建が泥沼化する背景には5つの理由があり、【1】「倒産」は極めて不都合、【2】「リーダー」がいない、【3】“経産省離れ”できない、に続く残り2つの理由を解説する。【全3回の第3回。第1回から読む】
【4】「助け合い」の落とし穴
再建の主役は株主でも債権者でも国でもない。経営危機に陥った企業自身だ。東芝の経営陣、従業員が目の色を変えて再建に取り組まない限り、V字回復など望むべくもない。だが日本の経済界には、役所の指示に従って、困った仲間を助けるという悪しき習慣がある。
今回も、規模の小さなJIP(※東芝との優先交渉権を持つ国内投資ファンドの日本産業パートナーズ)が出せるのは1000億円程度。そこで経産省が音頭をとってゆかりのある大企業が1兆円規模を出資する。名前が挙がっているのは中部電力、オリックスのほか、スズキ、東レなどだ。
本来なら東芝の実質的な親会社とも言える東京電力が出資する場面だが、自身が公的資金の注入で生きながらえている同社に、東芝を支援する余裕はない。そこで電力会社右代表として中部電力が引きずり出された。まだ確定はしていないが「10数社から出資する意向を取り付けた」と報じられている。まさに「奉加帳方式」である。「利が薄い」と踏んだ外資系ファンドは参画を見送った。
「オールジャパンで支える」と言えば聞こえはいいが、責任の所在が有耶無耶になる一方、口うるさい小姑が増えて迷走、座礁することが多い。企業再生を成功させるには、責任の所在を一ヶ所に集約し、そこに全権を委ねてスピーディーに物事を決めなくてはならない。
再建のスピードを上げるために一般の株主を振り落とす非上場化に踏み切るはずなのに、利害関係者を増やしたのでは本末転倒もいいところ。会議は踊り、再建は遅々として進まないだろう。