日本の年金資金を運用するGPIFの2022年7~9月における運用成績が赤字となり、2008~2009年以来の3四半期連続の赤字となった。この影響は年金にどのような影響があるのか。GPIFの役割や投資成績はどのようなものか。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第21回は、「年金を運用するGPIF」について。
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GPIFは、「Government Pension Investment Fund」の略で、日本の年金積立金管理運用独立行政法人のことです。わたしたちが毎月支払っている国民年金などの掛け金を運用しており、その運用成績は四半期ごとに公表されています。先日、2022年度7~9月(第2四半期)のGPIF運用成績が発表されましたが、なんとリーマンショック以来の大赤字になっています。わたしたちの大事な年金は大丈夫なのでしょうか?
2022年度第2四半期のGPIF運用成績
2022年7~9月の収益率は0.88%減で、赤字額は1兆7220億円。3四半期期連続での赤字はリーマン危機が起きた2008年7~9月期から2009年1~3月期までの3四半期連続以来、約13年ぶりのことになります。この情報だけだと衝撃的に思えますが、正直、心配するほどではないでしょう。なぜならGPIFの市場運用が開始された2001年度来で見ると、年率3.47%で運用できており、累積収益額は99兆9567億円と積み上がっているからです。
「賃金昇率+1.7%」を目指す長期的観点の投資原則
GPIFの運用資産額は、192兆968億円(2022年度第2四半期末現在)。その巨大な金額から“くじら”とも称されます。これほどの大きなお金を運用するのですから、気分次第でふらふらと方針を変えるわけにはいきません。骨太な投資原則がしっかりと掲げられています。投資原則の最初には「被保険者の利益のため、長期的な観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする」とあります。
年金財政上必要な利回りは「賃金昇率+1.7%」に設定されています。運用を開始した2001年度以来、この目標はおおむね安定的に達成しており、われらがクジラはかなりやり手の運用機関と言えるでしょう。
【参考】年金積立金の運用目標、実績などの詳細(GPIFホームページより)
https://www.gpif.go.jp/gpif/investment_return_target.html