いよいよ「岸田年金改悪」の議論がスタートした。厚生労働省が10月25日に社会保障審議会年金部会に提出した資料には、「年金減額」と「保険料負担の増額」につながる多くの“改悪メニュー”が盛り込まれている。
議論が始まった年金改革では次の「4つの改悪」が検討されていることが提出資料などから読み取れる。
【改悪1】厚生年金の減額
厚生年金の支給額を目減りさせるマクロ経済スライドを2033年度まで延長して赤字の国民年金を穴埋めする。
【改悪2】厚生年金の加入年齢上限を75歳未満(74歳11か月)に引き上げ
現在は70歳を超えて会社で働いても給料から保険料を引かれないが、75歳まで加入させて保険料を払わせる。
【改悪3】国民年金加入を65歳未満(64歳11か月)まで義務化
現在60歳未満の国民年金の加入年齢を65歳未満までに延長。加入期間45年にして5年間多く保険料を払わせる。
【改悪4】厚生年金のさらなる適用拡大
厚生年金加入の企業規模要件、賃金要件ともに廃止する。新たに325万人を厚生年金に加入させ、そのうち第3号被保険者の155万人を第3号から外して保険料を徴収する。
物価が上がっても増えない
値上げラッシュのこの10月、全国に先がけて発表された東京都区部の消費者物価(生鮮食料品を含む)の上昇率は3.5%と40年ぶりの高い伸びを示し、とくに食料品の上昇率は6.1%に達した。
政府は、物価上昇は来年前半も続くと見ており、日本はインフレ時代に突入した。一番影響を受けるのが年金受給者だ。年金がどんどん減らされる。「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
「本来、年金制度には物価が上がっても年金生活者が困らないように物価上昇分だけ支給額を上げていく仕組みがあります。
しかし、2004年の年金改正で、年金の引き上げを物価上昇率より低く抑える『マクロ経済スライド』という仕組みが導入されました。物価上昇2%なら年金引き上げは1.1%にとどめて支給額を約0.9%ずつ目減りさせていく。インフレの時代になるとこれが毎年適用されることになります。しかも、2018年からは物価が上がらずにスライドできなかった分は、物価が上がった年にまとめて目減りさせるルールまで導入されたので逃れられない」