近年、家族葬や一日葬、宗教・形式にとらわれない自由葬など、葬儀スタイルは多様化している。それに伴って葬儀費用を節約することも可能になり、実際、葬儀にかけるお金も減ってきているようだ。葬儀相談依頼サイト「いい葬儀」を運営する鎌倉新書の「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、葬儀の平均価格は110.7万円。2013年の202.9万円と比べ、約10年でほぼ半減という結果で、これは2013年の調査開始以降最安となっている。
葬儀費用のどこを抑えるか、という点は人それぞれだが、「棺」の費用がもったいないと考える人もいる。IT企業に勤務する30代の男性・Aさんは、祖父の葬儀に参列した後、母親から「棺」の値段を聞いて驚いた。
「葬儀でケチケチしたくないんですけど、棺の価格を聞いてびっくりしました。漆の棺だったのですが、20数万円ぐらいしたそうです。どんな素材であれ、最終的に燃やしてしまうのに、そんなに高いお金を払うんだ……というのが率直な気持ちでした」(Aさん)
祖父の死から、葬儀のあり方について考えさせられたというAさん。自分の葬儀にはお金をかける必要はないとも思っている。
「棺に、いろんな種類があるとか、何ランクもあるとか思っていませんでした。なんなら、選択の余地なく1種類しかない、ぐらいだと思い込んでいたほどです。お金をかけることが弔意という考えもあるのかなとは思いますが、何故そんなに棺に種類があるのでしょうか」(Aさん)
「棺は“お急ぎ便”の対象ではない」
従来「棺」は、基本的に葬儀社が用意するものだった。葬儀社のパンフレットから予算に応じて選び、葬儀プランを組み立てていくという流れだ。しかし、それだと安くても約5万~20万円(火葬料金は別途必要)かかる。その費用を抑えるため、今は通販を利用し、自力で「棺」を買う人もいるようだ。
実際、通販サイト・Amazonで「棺」を検索してみると、遺体を寝かせる布団付で2万円弱から購入できるが、自分で棺を用意しようとすると、意外な“落とし穴”にハマってしまう可能性もある。葬儀社現役社員で「考える葬儀屋さんのブログ」管理人・赤城啓昭氏は、こう語る。
「葬儀社を介するより節約できるからと、自分で棺を購入し、そこに遺体を入れて火葬場に持ち込もうとする人もいますが、まず、Amazonで買おうとしても、すぐに届けてくれるAmazonプライムの“お急ぎ便”の対象にはなっていません。つまり、必要になってからすぐには手に入らないということで、注意が必要です。
また、遺体は大量のドライアイスで急速に冷やす必要があります。亡くなり方にも個人差がありますから、遺体保存は非常に難しい。自力でなんとかしようとして、クーラーで冷やそうとする人もいますが、遺体の腐敗が進んでしまうと悲惨なことになります。失敗するリスクが非常に高いので、おすすめはしません」(赤城氏、以下「」内同)