世界情勢が混乱を極めるなか、低迷を続ける日本経済に復活の兆しはあるのか。インフレや増税、さらには利上げなど、懸念材料は多いが、果たして2023年は“失われた30年”を取り戻すターニングポイントになるのか。株式評論家の植木靖男氏、武者リサーチ代表の武者陵司氏、不動産コンサルタントの長嶋修氏が話し合った。【全3回の第2回。第1回から読む】
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長嶋:日経平均と不動産価格は見事に連動する傾向があり、この先株価が上がれば不動産価格の上昇が見込めます。首都圏の新築マンションの平均価格がバブル超えしたといわれていますが、まだ都心の3~5区が上がっているだけで、広がってはいない。30年前のバブル期は、日本の土地総額が2000兆円を超えていたが、今は1000兆円と約半分になっています。局地的にはバブルに見えても、見方を変えれば上昇の余地はまだまだあるということです。
武者:30年前と今の違いはほかにもある?
長嶋:ひとつは、欧米系のマネーが流入するようになったことです。この30年で日本の不動産取引のシステムはかなり機動的になり、REIT(不動産投資信託)などもできたことで、欧米系のマネーが非常に入りやすくなっています。
武者:たしかに、バブル前の日本の不動産価格は「担保価値」で決まっていたけれど、その後、日本もそこから得られる家賃収入など「利用価値」を重視するようになり、世界共通の物差しで見られるようになった。
それによって金利の低い日本の不動産は割安と判断されて、株式より一歩先に世界のマネーが急速に流入している。不動産と株の連動性が高いのであれば、それは今後、日本株にも世界のマネーが流入する予兆の可能性があるわけですね。
長嶋:私のところにも海外から不動産投資の相談が寄せられますが、つい最近までは中国をはじめとするチャイナ系マネーがほとんどでした。それが今は欧米系が増えています。というのも、アメリカは金利が上昇して不動産市場は頭打ち。次の投資先として日本の不動産の割合を増やす動きが加速することが十分に考えられますから、2023年の日本の不動産市場も上昇基調が期待されている。