回転寿司チェーン大手で利用客の迷惑行為が相次ぎ、ネット上に投稿された動画などが注目を集めている。「はま寿司」ではレーンを流れてくる他人の寿司に勝手にわさびを付けている行為が、「スシロー」では醤油ボトルや湯呑みをなめてから元に戻す客の動画が拡散された。店側は警察に被害届を提出して戦う姿勢などを見せているが、そうしたなかで注目を集めているのが、様々なネタを自由に選べる「一般レーン」とは別にある、注文ネタ専用の「高速レーン」だ。
近年の回転寿司チェーンでは、注文したネタを席まで運んでくれる専用の高速レーンを設けている店が増えた。ある回転寿司チェーンの関係はこう言う。
「高速レーンは、店側が鮮度の高いネタを迅速に提供するために設けられたというよりは、客の要望に応じる方向で登場した。同じネタが目の前を回転していても、新鮮なネタを食べたいとオーダーするのが定番となってきたため、それに対応したかたちだ」
高速レーンの登場で「食べたいネタだけを注文する客も増えたため、廃棄ロスは従来の5%から1%まで減っている」(経済誌記者)というメリットもあるようだ。
今回、迷惑行為が問題になったことで、注目を集めているのが「高速レーンだけの回転寿司チェーン」だ。業界では元気寿司グループが経営する『魚べい』が2012年に初めて導入した業態で、店内をお寿司がビュンビュンと流れていく。
従来の回転寿司のイメージとは異なるかもしれないが、魚べいではすべての商品がタッチパネルで注文されて高速レーンで運ばれてくるオーダー式となっている。通常ならテーブルに上に置かれている「ガリ」も高速レーンで運ばれてくる徹底ぶり。従来の回転寿司のように“干乾びたネタが店内を回る”ようなことはない。
「現在は従来の回転レーンの上に高速レーンを2本設けたトリプルレーンの店もあるが、高速レーンが3本の店が登場するなど、将来的には回転レーンは消える方向にあるようです。登場した当初は“これでは、回転寿司とは呼べない”と揶揄もされたが、“乾きロス”がゼロで浮いたコストでネタを大きくすることができると10年で171店舗(19都道府県)まで増える右肩上がりの成長を見せている。
それがここに来てさらに回転寿司の新しいビジネスモデルの在り方として注目されており、今後はどこのチェーンも高速レーンが主流になっていくかもしれない」(前出・経済誌記者)
迷惑行為に端を発して、回転寿司業界は大きな岐路に立たされている。回転寿司の代名詞ともいえるレーンの在り方も大きく変わっていくのかもしれない。(了)