また、扶養する相手の年齢によって、所得控除額に違いがある。70歳以上の直系尊属(父母・祖父母)で同居している場合は、所得税58万円、住民税45万円の控除となる。70歳以上のそれ以外の親族(叔父や叔母、あるいは別居している両親など)の場合は所得税48万円、住民税38万円。70歳未満の親族を扶養している場合の控除額は、所得税38万円、住民税33万円だ。
扶養者の年収が高いほど節税効果も大きくなる
では具体的にはどれくらいの節税になるのか。別居している70歳以上の親に扶養家族に入ってもらった場合を例に見ていく(※社会保険料は年収による概算。復興特別所得税は考慮しない)。
年収300万円の場合、「扶養あり」だと所得税は3万1500円となる。「扶養なし」の場合の所得税は5万5500円なので扶養での節税効果は2万4000円程度だ(復興特別所得税は別途かかる)。また、住民税は3万8000円の節税効果がある。つまり、所得税と住民税を合わせて6万2000円程度の税金が安くなるということだ。
年収500万円の場合は、扶養に入ってもらう所得税上の効果は4万1000円、年収700万円の場合は9万円となるので、年収が高いほど扶養にする効果が大きいことがわかる(住民税は年収に関わらず3万8000円)。所得税と住民税を合わせると、年収500万円では、7万9000円、年収700万円では、12万8000円の税金が安くなるということだ。
このように税金の扶養控除は、年収が高いほどの効果が大きくなる。また、扶養手当が支給される会社もあるので、さらに家計が助かる可能性もある。
一方、扶養者本人の税金は抑えられても、扶養に入る親の負担が大きくなる場合がある。ここからは、2つの“落とし穴”について説明していこう。
【落とし穴1】介護保険料が上がる可能性
両親を扶養しているケースのうち、両親と別居している場合や、同居していても世帯が別の場合は問題がないが、同居していて同じ世帯となっている場合は、両親の介護保険料や介護サービスの利用料が上がることがある。
その理由は、介護保険料の負担額を決める際に、同一の世帯にある親子の収入を合算して判断するからだ。親の収入が低く介護保険料が抑えられていても、子の収入が加わることで負担額が大きくなってしまう。特に、親が非課税世帯であれば、介護保険料はかなり低くなっているので、非課税世帯でなくなれば負担が大きくなる。
金額は自治体によって異なるが、横浜市を例にすると、住民税が非課税の世帯であれば年間の介護保険料は1万9500円だが、ひとりでも住民税課税者がいると年間7万200円と大きく上がる。
また、介護サービスを利用している場合も、毎月の利用者負担が同様に上がる可能性がある。
【落とし穴2】給付金がもらえなくなる可能性
両親が年金収入のみの場合、収入金額によって住民税の非課税世帯となっていることがある。ところが、子どもの扶養に入ると、たとえ別居していたとしても、子どもの所得と合算されて「非課税世帯ではない」と判定されてしまうことが多い(国民健康保険料や後期高齢者医療保険料などは世帯が別であれば、非課税世帯のままとして扱われる)。国の給付金は非課税世帯が対象であるため、扶養されることで別居同居にかかわらず臨時給付金がもらえなくなる。
国の臨時給付金として、令和4年度の「住民税非課税世帯等臨時特別給付金」は1世帯あたり10万円、「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」は、1世帯あたり5万円が給付された。
これらの給付金は、両親が居住している自治体以外に住民登録のある子どもから扶養されていると、同居別居に関係なくもらえなくなる。一方、自治体独自の臨時給付金は自治体ごとに基準が違うため、扶養されていても支給される可能性もある。
今後、どういった給付金があるかはわからないが、非課税世帯や居住地域などの条件で給付金の対象となっていた両親を扶養する場合は、あらかじめ注意しておく必要がある。