確定申告の時期は、「税金が返ってきた」という喜びの声がある一方で、「なぜか納税額が増えてしまった」という嘆きも聞こえてくる。なぜ確定申告をして税金が増えてしまうケースがあるのか、具体例とともに見ていこう。
年末調整の対象となる会社員は、原則として確定申告する必要はない。ただ、年末調整で適用が受けられない寄附金控除(ふるさと納税)や医療費控除の申告をしたばかりに、納税額が増えてしまうケースがある。
ふるさと納税したのに無効になった
ふるさと納税には、確定申告をしなくても寄附金控除が適用される「ワンストップ特例制度」という仕組みがある。だが、確定申告をするとワンストップ特例が無効になってしまうため、寄附金控除を申告しなければならない。「ワンストップ特例を利用しているから大丈夫」と、寄附金控除の申告を忘れると、税金の還付が受けられなくなるので注意が必要だ。
また、ワンストップ特例制度は6自治体以上に寄付をした場合も無効となるので、そのような状況においては確定申告しなければ控除が適用されない。
ふるさと納税の寄付金額の記載を忘れたまま確定申告をしてしまった場合は、「更正の請求書」を提出する。提出方法や記載内容は、所轄の税務署に確認しよう。
医療費控除の適用を受けたのに納税額が増えた
納税者、または生計を共にする親族が支払った医療費に応じた控除が受けられる医療費控除。だが、適用を受ければ必ず税金が返ってくるとは限らない。年末調整を受けている会社員が20万円以下の副業収入がある場合は、原則として確定申告が不要だ。つまり、所得と見なされていないため所得税の課税対象外となるのだ。
しかし、医療費控除の適用を受けるために確定申告をすると、20万円以下の副業所得にも申告義務が生じ、納税額が増えてしまうケースが考えられる。例えば、10万円の医療費控除を受けるために15万円の副業収入を申告すると、課税所得が5万円増えてしまう。
なお、20万円以下の収入であっても住民税は申告の義務があるので、副業をしている場合は、所得があった翌年の3月15日までに各市区町村の役所に申告する必要がある。