老後の「終の棲家」となる場所のひとつが、有料老人ホーム。近年は数億円を超える入居費が必要な施設もあり、その市場は盛況だ。そうした施設を利用する富裕層は、何を求めて入居するのか。新刊『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』が話題のライター・小林義崇氏が、元国税専門官として富裕層に相対してきた経験から、富裕層のライフスタイルと考え方を解説する。
* * *
子どもに教育費をかけ、社会に送り出した後、富裕層の多くは夫婦や単身での生活になります。たとえ十分に二世帯住宅にできる広さの土地があっても、家族と暮らすケースは多くありません。子どもたちが自立して結婚すると、つかず離れずの距離感を保とうとする傾向があるのです。
そうして、富裕層のなかには、「終の住まいは高級老人ホームで」と考える人が出てきます。少子高齢化のなか、日本では有料老人ホームが増え続けており、食事や家事、介護、医療やレクリエーションなど、さまざまなサービスを提供しています。
老人ホームのなかには、入居一時金のかからない「特別養護老人ホーム」や、比較的低額で利用できる「グループホーム」などさまざまなタイプがあります。富裕層がよく利用しているのが、「介護つき有料老人ホーム」です。介護つき有料老人ホームは民間企業が運営しており、豪華な共有スペースや、食事などにこだわっているのが特徴です。
入居にあたって必要な費用は施設によって異なりますが、富裕層をターゲットとする施設では1億円を下りません。
たとえば東京都世田谷区の高級住宅街にある「サクラビア成城」は、もっとも料金の低い居室タイプでも前払金が1億1910万円~1億4010万円に設定されています。この金額は、50.89平米の居室を1人で利用する場合です。105平米の居室を2人で利用する場合は、前払金として2億7670万円~3億6670万円を支払う設定です。