ペットが起こした事故について、「どこまでが飼い主の責任か」が争点となるケースは少なくない。では、犬に触ろうとして咬まれた場合、飼い主と咬まれた人、どちらに責任があるだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
スーパーの前の電柱に柴犬が繋がれていました。飼い主は買い物中らしく、不安そうだったので、頭をなでようとした瞬間に咬みつかれ、手から出血。飼い主は勝手に触ろうとした、あなたが悪いと主張。この場合、犬に触ろうとした私と飼い主、どちらが悪いですか。また、治療費の請求は難しいでしょうか。
【回答】
動物の飼い主は、飼育する動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負い、免責されるのは、動物の種類や性質に従った注意を払って、事故発生を防止する管理をしていたときだけ。犬はもともと、人を咬む性質があり、これを前提に適切な管理をすることが必要で、本来は一定範囲を出ないように囲うか、繋いで飼育すべき動物です。
人が通行する歩道の電柱に繋いでいれば、誰でも触れますし、かわいがるつもりで手を出す人がいることや、通行人が気づかず、すぐそばを通りすぎるのは十分あり得ること。結果、犬が驚いたり、嫌がったりして反射的に咬んでしまうことも予見可能です。
そうであれば、そばにいて制止したり、警告できる態勢を取っていない場合には、飼い主が管理を尽くしたとはいえません。もっとも、繋がれている犬を挑発して怒らせたり、強い恐怖心を与えたりして咬まれたような場合では、適切に管理しても回避できないので、咬まれた人の自招行為として免責されるかもしれません。