こうした例外的な場合でない限り、飼い主は賠償責任を免れません。一方、前記のような性質を有する犬に警戒もせずに不用意に近づき、かまって咬まれた人は不注意といえます。咬傷事故によって治療費等の損害が発生しても、被害者に落ち度がある場合、その程度に応じ、飼い主が負担すべき賠償額は減額されます(過失相殺)。
柴犬は、見た目もかわいい人気のある犬です。しかし、もとは猟犬で野性的な犬種といわれ、愛玩犬のように愛想よくありません。
個性的で、そこが魅力でもありますが、接するときには注意が必要でしょう。それなのに頭を触ろうと手を出したのは不注意で、過失相殺されると思いますが、飼い主には賠償責任があるため、諦めずに交渉してください。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2023年3月24日号