災害時に“いちばん困ることは何か”を想像する
阪神・淡路大震災(1995年)の翌年に生まれたのが、防災に関するNPO法人『プラス・アーツ』神戸事務所の光田和悦さん。当時を知らず、防災意識を持つことはなかったが、2019年に東京で台風19号に遭い、その怖さを思い知る。
「多摩川が氾濫する光景と、翌朝の澄み渡った青空のギャップが恐ろしかったんです。ぼく自身の被害はなかったものの、防災について何の知識もない自分が恐ろしくなりました」(光田さん・以下同)
防災への関心が高まると、自ずと備えるものも見えてきたという。
「地震が起きたときに考えられるのは断水です。そして、『断水でいちばん困ることは何か』を想像します。自分にとって耐えられないのはトイレに行けないこと。次に、歯磨きやうがいができないのもつらいなと考え、携帯トイレや汚物を入れる袋類、水を使わずサッと口の中の汚れを拭き取れる口腔ケア用ウエットティッシュを少し多めに持ち歩こうと思うようになりました。困り事の優先順位をつけると持つべきものが浮かび上がると思います」
時間が経つと、備える意識が薄れてしまうこともあるが……。
「たとえば、お子さんや家族など、大切な人に防災グッズを贈ってみるのはいかがでしょう? ぼくも両親に家具転倒防止グッズを贈り、一緒に設置しました。何が必要かを考えることで、防災が身近なものになっていくと思います」
【プロフィール】
国崎信江さん/危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表。女性・母親の視点から防災・防犯対策を提唱。省庁の検討・審査委員や自治体の防災アドバイザーなども務める。
光田和悦さん/「防災は、楽しい。」をテーマに、楽しく学べる防災訓練イベントの開催支援、数々の教材や防災グッズの企画・開発を行うNPO法人「プラス・アーツ」神戸事務所に勤務。
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2023年3月16日号