国語や算数など小学生と同じ勉強も
オバ記者:そういえば八木澤さんは「小学館集英社プロダクション」にお勤めですね。なぜ、施設の運営に携わっているんですか?
八木澤さん:2002年に成立した「構造改革特別区域法」で、職業訓練などの業務が民間事業者に委託されるようになりました。その法律は廃止されましたが、2006年の「公共サービス改革法」で施設運営業務の一部を民間事業者へ委託することが継続されたため、引き続き施設運営に携わっています。
オバ記者:小学館のグループ会社が、施設の教育プログラムにかかわっているとは驚きました。
八木澤さん:お子様からシニアまで、人生を前向きに生きるための手助けをする企業であり、教育のノウハウがあるため、業務を託されているのです。
オバ記者:具体的に、どのような教育プログラムなんですか。
八木澤さん:一例ですが、ここには小学校高学年の勉強が不充分なかたもいます。その場合は、国語や算数など小学生と同じ勉強をしてもらいます。出所後の日常生活を支障なく過ごすための下支えですね。みなさん真剣にやってくれています。
オバ記者:読み書きなど基礎の基礎ができてないがために、さまざまな誤解を生んで罪を犯す人もいますか。
植田さん:いますね。
オバ記者:雑音が入らない環境で学べることはいいですね。
青柳さん:そうですね。学び直しの機会でもありますし。受刑者が釈放される際に感想文を提出してもらっています。白紙の人もいますが、「こんなに活字に触れる機会は初めてだった」「たくさん本を読めてうれしかった」「いろいろと教えてもらえて感謝している」という声もあります。
植田さん:逆に、高い知能を有していて、法の抜け道をついて罪を犯す人もいます。
オバ記者:高学歴の人に対するプログラムはあるんですか。
八木澤さん:特にありませんが、この施設には高学歴の人もいます。刑務所は社会の縮図のようなところですから。
(後編につづく)
●喜連川社会復帰促進センター
定員は男性受刑者が1906名、女性受刑者が50名の1956名。刑期8年未満の受刑者を主に収容。施設敷地面積は425.891平米(東京ドーム約9個分)。職員は397名(支所を含む)。2021年末のデータによると、受刑者の罪状は、窃盗約30%、詐欺約21%、薬物事犯約12%、傷害約3%、強盗約3%、その他、交通事犯者や性犯など。
【プロフィール】
オバ記者こと野原広子(65才)/空中ブランコ、富士登山など体験取材を得意とする。
撮影/浅野剛
※女性セブン2023年3月23日号