個人事業主では、事業がうまく行かず、借金がどんどん増えてしまうこともあるだろう。そういった場合、「債務整理」もひとつの選択肢となるが、その「債務整理」にもいくつか種類がある。それぞれどんなメリット・デメリットがあるのか。弁護士の竹下正己氏が、実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
息子は個人事業主ですが、仕事が思うようにならず銀行や消費者金融から1000万円以上の借金をしています。このままでは借金が膨らむ一方なので債務整理をした方がいいと思っています。
債務整理には任意整理や民事再生、自己破産などの種類があると聞きましたが、それぞれのメリットやデメリットを教えてください。今後どこかに就職したいと思っているようですが、就職にマイナスにならない方法はありますか。(東京都・66才・パート)
【回答】
「任意整理」とは、裁判所による民事再生や破産の手続きを利用しないで、債務の分割払いや借金のカットなどについて債権者と合意し、文字通り任意で債務を処理するものです。
この方法は、債権者の数が少なく、金額も大きくない場合に利用されることが多いです。ただし、ある程度の時間をかければ返済できる見込みや、現金がなくても不動産などの返済原資のあてがないと、債権者との話はまとまりません。
「民事再生」は、裁判所の認可を受けた再生計画に基づいて返済を行い、生活や事業の再建を図るものです。将来の継続的収入が期待できて、債務の総額が住宅ローンを除いて5000万円以下の個人事業主は、簡易な「小規模個人再生」の制度を利用できます。
この手続きが開始されると、抵当権などの担保権を持たない債権者は強制執行の申し立てができません。そこで、抵当権者の理解を得て競売を待ってもらえば仕事を続けることができ、住宅ローン以外の総債務額中の一定の額(※)を原則3年間で分割返済する再生計画を立て、不同意の債権者が頭数の半分未満でかつ金額で総額の半額以下なら可決され、再生計画が認可されます。
(※総債務3000万円以上は10分の1、1500万円以上3000万円未満は300万円、500万円以上1500万円未満は5分の1、100万円以上500万円未満は100万円)
その後、計画どおりの返済をすると、税金などを除いて残りの債務などが免除されます。なお、住宅ローンについても再生計画に住宅資金特別条項特則を定めることができれば期限の延長などが可能です。