大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

AI社会で生き残れる仕事は「学校教育の外側」にある キーワードは「構想力」

 これからメシの種になるのは「人間にしかできないこと」であり、構想力を持つ人材だということです。ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジャック・ドーシー……いろいろいますが、ほとんどが複数の企業を立ち上げています。

 イーロン・マスク氏は、ペイパルの創業もやっていますし、テスラの創業、スペースX。NASAが今、スペースXに宇宙開発を依存する。ニューラルリンク、ハイパーループ、つまり、「シリアル・アントレプレナー」と言われて、1人の人間がいくつもこうやって起業する。理由は、この世界はほとんど先人がいない世界なので、そういう発想をできる人というのは、次から次にビジネスを立ち上げられる。こういう状況ですね。

 それから、ジャック・ドーシー氏はツイッターの創業者ですけども、最近CEOから退きました。今は決済サービス企業のブロック(旧・スクエア)のほうに集中しています。

 AI(人工知能)の強みと弱みですけれども、これはコンピューターですが、記憶とかそういうやつは圧倒的に強い。しかし、0から1を生み出す構想力、それから介護などの細やかな神経とか人手が必要なところ、これはコンピューターは苦手なんです。したがって、サイバー社会でメシの種になることというのは、人間にしかできないことに限られる。この最たるもの、富を生むものは「見えないものを見る力」、つまり構想力ということです。

「料理」でも日本人は傑出している

 そういう本を私はかつて書いているんですけれども、実はもう1つ、そういう領域があります。それは、学習指導要領の外側。ここは、日本は非常に強いんです。すでにこれまでの著書でもたびたび解説していますが、スポーツや芸術、ゲーム、漫画、アニメなどです。

 それだけではありません。料理の分野でも日本人は傑出しています。ミシュランの星付きレストラン、いつの間にか東京が世界一で、パリの2倍あるんです。フランス人は悔しくてしょうがないと思いますが、実はその次が京都ですよ。それから大阪、香港、ニューヨークと続きます。

 あるいは、ミシュランの星が付かなくても、創意工夫によって日本でしか食べられない料理が山ほどあります。寿司や天ぷら、ラーメン、とんかつなど枚挙に暇がありません。

 これらは、文科省の学習指導要領がない世界なんです。優れた人のところに弟子入りしていくんです。伝統的な習い事みたいなものです。これは指導要領というよりも「0から1」の発想力が必要とされますが、コンピューターにはできません。コンピューターは、標準化する作業は得意ですが、そうじゃない仕事は苦手です。だからこそ、そこにかなりの富があるんです。

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