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「半導体バブル」に沸く熊本・菊陽町の狂騒 畑は買い上げられ地価急騰、パチンコ店も連日満員

菊陽町で急ピッチで建設が進む半導体世界最大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の工場

菊陽町で急ピッチで建設が進む半導体世界最大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の工場

 熊本空港にほど近い熊本県菊池郡菊陽町。阿蘇山の山裾から緩やかに広がる平野で、幹線道路の両側はニンジン畑など田畑が広がる長閑な地域だ。昨年来、そんな景色に“異変”が起きている。町を通る国道の北側に位置する雑木林の中から、20数本もの建設用クレーンが天に触手を伸ばすかのようにそそり立ち、周辺住民を驚かせた。いったい何が起こっているのか──。現地を訪れて見えてきたのは、小さな町で沸き起こっている「半導体バブル」の狂騒だった。

 地元を走るタクシー運転手が語る。

「こん要塞のごたるのが建設中の工場ばい。今年末の完成を目指して24時間体制で造っとります」

 半導体世界最大手の外資系企業「台湾積体電路製造(TSMC)」が熊本への進出を表明したのは2021年10月。投資総額86億ドル(約1兆円)のおよそ半分を国が出資すると見られており、菊陽町役場・商工振興課の担当者も対応に追われていると話す。

「TSMCの工場は今年の年末までに完成し来年12月から生産を開始する予定です。従業員は1700名で、うち320人は台湾からのTSMCの社員の方々。家族を含めると600人ほどが来日します。

 TSMCからの地元行政への要望はアパートなどの住まいの確保でした。具体的な条件として、日本の感覚より一部屋多いタイプが好まれるそうで、広めの間取りを求められました。現在、概ね確保できています。お子さんたちの受け入れはインターナショナル・スクールと、地元の公立の学校でも受け入れることになっています」(町役場の担当者)

 九州を拠点とする金融グループによると、協力会社であるサプライヤーを含めた近隣への移住者は従業員1700人の4.5倍となる、7500人に及ぶと見ている。昨年9月に公表された地価調査の結果によれば、菊陽町の工業地の地価上昇率は前年比31.6%で、全国トップ。経済効果は10年間で4.3兆円と試算されており、地元不動産会社の鼻息も荒い。コスギ不動産ホールディングス取締役の小杉竜三氏はこう話す。

「菊陽町と、隣接する大津町を中心にバブルが起きていて、土地価格は2~3倍に跳ね上がっています。実は菊陽町の7割、大津町の8割の土地は建物が建てられない市街化調整区域が占めます。少ないパイを巡って不動産業者が争っている状況なんです。

 住宅はまだまだ足りていません。工場側は行政に対して『今年9月までに1000室を確保してほしい』と要望していますが、確保しきれていない状況です。すでに“第2工場”の話も出ており、これも県内に決まればこの活況が5年、10年続くと期待しています。現在はまだ具体的に動いてはいませんが、『台湾人向けの中華料理や飲茶の店を出したい』という相談も何件か来ています」

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