工場周辺の畑が片っぱしから買い上げられている
一方で、地元に住む人々の実感は様々だ。記者が周辺を歩いてみると、需要増を見越して市内からこの地域に進出したラーメンチェーン店に行列ができ、賃貸不動産専門の業者が自社ビルを建設中だった。
かつて“パチンコ街道”と呼ばれていた国道沿いのパチンコ店は閉店が続いていたが、昨年暮れに大型店が新規オープンした。駐車場は満車で、店内には大勢の客で賑わっていた。
「銀行と不動産屋が、事業転用できる周辺の畑を片っぱしから買い上げている状況だよ。一部の人間にバブルが来ているのかもしれませんが、地元民にとっては地価が上がって税金が心配だけどね。パチンコ屋の駐車場が連日満杯なのも、客のほとんどは土地を売った農家と工業団地で働いている人たち」(菊陽町在住の男性)
大規模工場の進出による影響を危惧する声もある。地元の理髪店主は、渋滞問題を懸念する。
「県や熊本市は交通の便をよくしようとJRの路線を延伸するなどするようですが、渋滞解消になるのかは疑問です。道路の拡張計画もありますが、何年先になるのかわかりません。用地買収だってこれからの話ですから」
熊本市東区では、インターナショナル・スクールが急ピッチで台湾からの子供たちを迎える新校舎を建設している。9月の新学期前には完成予定で、この周辺でも台湾からの移住者が住むと見られる。熊本市内の経済団体に加盟する会社経営者はこう話す。
「喫緊の課題は不動産だけでなく、人材難が一番の問題で、アウトソーシングや派遣業者への引き合いも多いようです。とくに最先端の半導体の工場なので、工事を請け負っている鹿島建設も秘密保持のため単独受注しています。
給与の好条件だけでなく、地元出身者は秘密保持の面で有利だという噂もあって、技術系の人がUターンするケースが多いようです」
熊本県の小さな町に訪れていた「半導体バブル」。地元の狂騒も期待の裏返しか、地域だけでなく日本経済復興のキーとなることを期待したい。(了)
取材・文/橋本安彦