「親の介護で離職」「家計が苦しくなってきたからもっといい条件の職場に転職」「子供が成長したから正社員に」。さまざまな事情でパートやアルバイトを辞めるとき、どんな理由でも共通していえるのは「辞め方」であなたのその後が大きく変わるということだ──。
日に日に暖かくなり、春が近づいていることを実感するが、神奈川県に住むAさん(53才・仮名)は毎年この時期になると悔しい体験が思い出されるという。
「5年前、長年勤めていた食品工場のパートを辞めたときのことです。人事担当者から“源泉徴収票は必要ですか?”と聞かれましたが確定申告は面倒だし、どうせパートだから戻ってきても微々たるものだろうと思って、受け取らなかったんです。ところが、後で同時期に辞めた同僚に聞いたら、“申告したら10万円も還付された”と喜んでいました。多少面倒でもきちんと手続きすれば、それくらい戻ってきたのでしょうか……」
パートやアルバイトであっても、手続きに不備があったり知識がないせいでAさんのように大きな損をすることもある。後悔しないように「正しい辞め方」を知っておきたい。
退職は辞める意思を雇用主に伝えることから始まる。口頭や電話だけでなく、最近はLINEやメールなどさまざまな通信手段があるが、どの方法で伝えるのが正しいのだろうか。KTG湘南藤沢法律事務所の弁護士・山口裕哉さんが解説する。
「口頭とともに書面でも意思表示を行ってください。その際、退職希望日も記載するのがベター。口頭だけだと“言った・言わない”などのトラブルに発展したり、いつ退職したいかといった日にちがきちんと伝わらなかったりする可能性がある。書面といってもメモ程度でかまいません。名前と『一身上の都合により○月○日をもって退職します』と書くだけでいい。理由は特に書く必要はありません。書面を事前にコピーしておき、手渡した日付を書き込んでおけば、もしもめたとしても証拠として機能します」(山口さん・以下同)
ほとんどの人が使っているLINEで伝えるのは問題があるのだろうか。
「伝われば手段は問いませんが、LINEは比較的簡単に偽装できます。万が一のトラブルを避けるためには、書面で渡すのがいちばん確実です」