“保険に入りすぎている”と言われることもある日本人。2021年の生命保険文化センターの調査によれば、保険の世帯加入率は89.8%にのぼり、1年間に支払う保険料の平均は37.1万円。30年間払えば1113万円にもなる。コロナのほか、がんや認知症など、あらゆる不安を解消するため、本当は必要ない保険にいくつも入っている人が多いのかもしれない。
保険とはそもそも「起きる可能性は低いが、いざ起きたら、大きな損失があるトラブル」に備えるものだ。オフィスバトン「保険相談室」代表の後田亨さんが解説する。
「具体的には、家がなくなった、子供が小さいのに世帯主が亡くなった、事故で人を死に至らしめてしまった……といった“まれに起こる一大事”のことです。こうした場合は、数千万円単位や億円単位のお金がかかるため、ほとんどの人が支払うことができません。このような大きな損失を、安い保険料で保障してくれるのが保険なのです」
ひるがえって言えば、大きな損失さえなければ“備え”は必要ない。たとえ夫に先立たれても、妻ひとりなら、遺族年金や妻の収入で何とか暮らせるだろう。子供がいない夫婦や子供が独立した家庭には、生命保険は不要なのだ。
「保険は、お金を用意する手段の1つです。保険という“システム”を利用している以上、利用料がかかる。例えば“10万円の給付金を受け取るのに、数万円の送金料がかかる”と考えてください。
自分で用意できない大金が必要になる事態以外では利用しない方がいい。『入院だけでなく通院も』『がんになったら』など、保険会社が用意する“状況設定”にハマってしまうと、どんどん本質から逸れていき、必要のない保険に入ることになってしまう」(後田さん)