総務省の「住宅・土地統計調査」(2018年)によると全国の空き家は約848万戸に膨れ上がっており、政府も空き家対策の強化を進めている。そうしたなかで、親から実家を相続したはいいが、結果的に不動産が“負動産”となるケースもあるだろう。「売れない・貸せない・自分は住まない」という状態のうえ、解体するのも簡単ではなく、税金や費用増加で首が回らなくなることもあるのだ。
期限は3か月しかない
そうした“空き家負担”をゼロにする最終手段が、すべての遺産を相続しない「相続放棄」だ。
『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』の著者で司法書士の椎葉基史氏が語る。
「1989年に約4万件だった相続放棄の実施数は、年間約24万件に達し、30年余りで6倍になりました。以前は親の借金が理由のケースが多かったのですが、ここ数年は地方を中心とした不動産をどう処理すればいいかという相談が顕著に増えています」
“負動産”への関心が高まるなか、準備不足のため相続放棄できず、やむなく多大な負担を背負った人も多いはずだ。それを避けるには手続きについて正しく学び、備える必要がある。
まず、どういった人が「家の相続放棄」に向いているのか。
「相続放棄は『すべての遺産を放棄する』必要があるため親の金融資産が少なく、地方に不動産を所有する人は検討したい。“土地や家は持っておいて損はない。不要になれば売ればいい”と考えるのは危険」(椎葉氏)
注意すべき点は、この制度は「タイムリミット」が障壁になることだ。相続放棄は親が亡くなってから(相続人が相続の発生を知ってから)、原則3か月以内に家庭裁判所で手続きをしなければならない。その際、相続放棄申述書、被相続人の住民票除票、申立人の戸籍謄本などが必要になる。