相続放棄はゼロか100
一方、この3か月の間に「やってはいけない」ことにも気をつけたい。
「この間に故人の家や土地の名義を変更したり、預金を使ったら『相続した遺産を処分した』とみなされ、放棄が認められない可能性がある。“相続する気で慌てて名義変更を済ませたら、後に負の遺産が見つかった”という相談例も多い。田舎の山林など“いらない不動産”も後にわかるケースがあります」(椎葉氏)
また法定相続人である故人の子供が全員、相続放棄の手続きをすると、相続人は第二順位(故人の両親)、第三順位(故人の兄弟姉妹甥姪)へと移行する。相続放棄をする場合は、こうした「次の相続人」への連絡を欠かしてはならない。
「伝えておかないと、相続人となった親族がよくわからないまま“負動産”の所有者となり、税金や維持費の負担を求められるかもしれません。親族間のトラブルを避けるためにも相続放棄したら、必ず次の相続人に連絡してほしい」(椎葉氏)
そして最も大切なのは、親が亡くなる前から準備をしておくことだ。
「相続放棄はゼロか100かで、金融資産は相続するけど不動産は放棄するという“いいとこ取り”はできません。親の死後の短い期間で慌てて決断して失敗しないよう、生前から資産をきちんと把握しておき、やがて来る日に備えて家族で話し合っておくことが最も大切です」(椎葉氏)
勇気を持って手放すことでプラスになることもある。生前から万全の準備を重ねるのだ。
※週刊ポスト2023年3月31日号