金価格が急騰している。NY金先物(中心限月)は3月7日には1トロイオンス=1818.6ドル(終値、以下同様)を付けていたがそこから急上昇し、3月20日は年初来高値となる2003.5ドルを付けている。過去最高値は2020年8月6日の2069.4ドル。2022年3月上旬にも2000ドル超えがあるが、それらを超えての高値更新も視野に入り始めている状況だ。
金価格が上昇する要因にはいくつかある。例えば、2020年8月の急騰時は、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響を受けたグローバルな景気低迷、金融緩和見通しが要因であり、2022年3月上旬はロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの急激な高まりが要因となった。
一般に利子のつかない金は、金融市場が健全であるときには投資先としては不利であることが多く、逆にそうした金が人気を集めるときは、実質金利がマイナスになるとか、金融市場が極めて不安定になるとか、投資家がリスク許容度を縮小せざるを得ないような特殊な場合である。
今回、もし金先物価格が史上最高値を更新するようなことになれば、逆にそれはパンデミック、戦争に匹敵するような事件が起きているといった見方もできるかもしれない。
足元での急騰の要因は、シリコンバレー銀行の破綻、クレディ・スイスの経営不安などに端を発する“グローバル金融機関の経営危機”であり、“それが連鎖する可能性への懸念”である。