4月からNHK受信料を巡る“新たな仕組み”がスタートする。NHKが受信料未払い者に対して、2倍の「割増金」を請求できるようになるのだ。もともと、「NHKなんて見ないのになぜ受信料を支払わなければいけないのか」「受信料を払った人だけが視聴できるスクランブル化を導入すればいい」といった声が少なくないなかで、まるで“罰金”のような新制度がスタートすることに対して批判の声も上がっている。
新制度は4月1日に施行される新たなNHK受信規約に基づくものだ。NHKの放送を受信できる機器(テレビなど)を設置したにもかかわらず、「設置の翌々月の末日まで」に正当な理由なく受信契約を結ばない者に対し、NHKは支払いを免れた期間の受信料に加えてその2倍相当の「割増金」を上乗せして請求できるようになる。もともとの受信料に割増金を加え、計「3倍」の額を請求できるという内容だ。
NHKの受信料は今年10月から1割値下げされるが、現在地上契約で月額1225円、衛星放送も見られる衛星契約では同2170円。仮に今年4月に設置したテレビの地上契約を1年間結ばず翌年4月に契約した場合、その間の受信料1万4700円に2万6950円の割増金(2023年5月~2024年3月までの11か月分)が加算され、計4万1650円が請求されるという計算になる。
新制度についてNHKの稲葉延雄会長は1月の就任会見で「一律に条件に該当するからといって請求するということではなく、お客様の個別の事情を総合的に勘案しながら運用していく」と述べたものの、そもそも近年のNHKが受信料の徴収強化を進めてきた流れもある。
放送法64条1項には「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」とあるが、NHKが公表している2021年度末の「受信料・受信契約数に関するデータ」によると、受信契約対象世帯数4666万件に対して世帯契約数(=受信契約を締結している世帯数)は3796万件で、世帯契約率で表すと81%にとどまる。2000年代にNHKの不祥事が相次いだことなどをきっかけに受信料の契約率は低下したが、挽回のためにNHKは徴収強化に力を注ぐようになった。
2017年12月には、テレビを設置しているのに受信契約を結ばない男性を相手取ってNHKが受信契約の有効性と未払い期間分の受信料の支払いを求めた裁判で、NHK側の主張が最高裁で認められた。それ以降もNHK側はカーナビやワンセグ付き携帯電話といった受信設備が受信契約の対象になるかを争う裁判を相次いで起こし、勝訴してきた。