「チューナーレステレビが人気の時代に逆行」
そうした流れのなかで、今回の割増金制度はスタートする。NHKを受信しないようにするテレビ用フィルター機器「IRANEHK」(イラネッチケー)の開発者で筑波大学システム情報系准教授の掛谷英紀氏はこう指摘する。
「スクランブル放送にしてNHKを視聴した世帯のみが受信料を支払うように放送法を改正してほしいという声も大きいなかで、今回の罰金のような新制度は時代に逆行しているのではないかと思います。そもそも、(主にネット配信映像だけを楽しむための)チューナーレステレビが人気であることからもわかるように、“地上波やBS・CSが映るテレビなんていらない”と考える人が増えている現状もある。このままでは、そうした流れがさらに加速するでしょう。
今回の割増金の新制度についてNHK側が説明不足だと感じられることも気になります。『個別事情を総合勘案しながら運用』するといいますが、具体性に欠け、どうとでも運用できるのではと懸念してしまいます。なお、“テレビなんて見ない”という人でも、受信契約に応じずにいたら割増金を請求されるケースが出てくる可能性があるので注意が必要です。受信料や割増金請求を確実に避けるには、テレビ、レコーダ、ワンセグ付き携帯(スマートフォン)・カーナビなど、チューナー内蔵機器は全て処分しておくしかないでしょう」
厳しい意見が少なくないなかで割増金制度をスタートさせるNHKの思惑について、掛谷氏はこうみる。
「NHKの2023年度予算と事業計画では、受信料収入は前年比460億円の大幅減(マイナス6.9%)を見込んでいる。割増金制度導入の背景には、若者のテレビ離れが深刻化し、今後も収益の低下が続くと予想されるなかで、少しでも受信料収入を確保したいという考えがあるのでしょう。とはいえ、ただでさえ物価高騰で家計が圧迫されて経済的に困窮する人が増えているなか、丁寧な説明が不足したまま徴収強化を進めれば、NHKに対するさらなる反発を招くだけではないか」
果たして4月からの新制度が、どのような結果をもたらすのか。(了)