「預貯金も少ない自分には、相続税は関係ない」──。そう考えていても、自宅などの不動産を所有する場合、路線価上昇や周辺開発の影響などにより、いつの間にか評価額が高騰し、相続税が課される水準になっているケースがある。
不動産価格の上昇に抗う術はないが、対策することで相続税額の圧縮は目指せる。円満相続税理士法人代表の橘慶太税理士が解説する。
「不動産の相続税対策として最も有効なのが、土地の相続税評価額を80%減額できる『小規模宅地等の特例』です。たとえば1億円の土地を1人が相続する場合、通常であれば約1220万円の相続税が課税されるところ、特例を使うと評価額自体が2000万円まで下がります。基礎控除(この場合は3600万円)の枠内に収まるため、相続税はかかりません。利用できるケースでは絶対に使うべき特例と言えます」(以下、「 」内のコメントは橘氏)
同制度は、被相続人が自宅として使っていた土地(330平米まで)を、配偶者か同居親族(子供など)が相続する場合に利用できる。
「よく『親(被相続人)との同居期間はどのくらい必要か』と聞かれますが、その制約はなく、極端な話をすれば、亡くなる1週間前からの同居でも適用されます。ただし、相続が発生した後、相続税の申告期限(相続開始後10か月)まで、継続して住み続けることが条件になります」
同特例の恩恵を受けるには、相談する税理士が相続税制に強いかどうかがポイントになるという。なぜか。
「相続税法に詳しく実務に長けた税理士が少ないことが理由です。小規模宅地等の特例を受ける際、自宅の土地は、1億6000万円まで非課税枠のある配偶者への相続ではなく、同居の子供に相続させたほうが相続税を圧縮できるケースがありますが、不慣れな税理士はそこを間違えてしまうことがある」
※週刊ポスト2023年4月7・14日号